「ミャンマー発展のために英語を学んでほしい」。こう熱く語るのは、ヤンゴン市内にあるマノラマ寺子屋で英語を教えるミャンマー人女性、ミミソゥ(27)さんだ。信条は、結婚よりも「英語教育」。
ミミソゥさんは子どものころから教師になるのが夢だった。ミャンマーでは大学受験の点数によって入学できる学部が決まる。彼女は大学受験で高得点を取って、名門・ヤンゴン大学で工学を専攻。2009年に卒業した。しかし、教師になる夢を諦めきれず、卒業してすぐに家庭教師の仕事を始めた。教えるのは英語。対象は大学生と社会人だ。月収は50万チャット(約5万円)。家庭教師を今でも続けながら、1年前からマノラマ寺子屋で英語クラスのアシスタント教師を始めた。1クラス1時間半の授業を毎日4クラス担当している。
教えることがライフワークの彼女は「この国の教育制度では、卒業試験の点数で、入学する大学と学部が決められてしまう。どの学部も、その勉強をしたい人が入学できるようにすべき。(そうした状況を心配して)私は結婚して家庭をもつよりも、教えることを続けたい。寺子屋の生徒たちにはぜひ英語を生かして、ミャンマーを発展させてほしい」と願う。
英語はこの寺子屋で教師をしている彼女の祖父ウーティンピィ(86)さんから教わった。彼女の憧れの人物だ。彼はシャン、バンジャビ、ウルドゥー、フランスなどの8つの言語を話すことができるマルチリンガル。
ウーティンピィさんは軍事政権時代に財務省の高官として働いていた経験をもつ。現在は、マノラマ寺子屋で英語教師をしている。寺子屋の教師はすべてボランティアで給料は支払われない。教師をするかたわら、彼はミャンマーの文化について本を英語で書き、出版する。ミミソゥさんも将来、ミャンマーの教育について英語で本を書きたいという夢をもつ。
ウーティンピィさんは「授業で若い世代の人と触れ合えるのがとても楽しい。自分の知識を伝えることに喜びを感じる。お金儲けばかりして患者を治さない医者より、この寺子屋は無料で勉強を教えているし(3カ月に1000チャット=約100円を設備費として寺子屋に納める)、教師の仕事のほうがずっと人のためになる。私は教師である孫をとても誇りに思う」と話す。