「この学校の英語教師は英語が話せない。だから私たちのサポートが必要だ」。こう話すのは、ミャンマー・ヤンゴン市中心部から北に20キロ離れたミンガラドン地区のシュエミンウン僧院学校で外国人ボランティアとして英語を教えているベトナム人、スーさん(22)。しかし、ミャンマー人英語教師は決して英語が話せないわけではない。文化的な感覚の違いが誤解を与えている。
ミャンマー人英語教師は英語が話せないと外国人ボランティアが感じる理由は大きく分けて2つある。
1つ目は外国人ボランティアが求める英語教師のレベルとミャンマーで必要とされる英語教師のレベルが異なるからだ。外国人ボランティアは、英語での会話や細かい文法、作文など、自国で行われている高いレベルでの英語教育を目指しがちだ。
実際にスーさんは「子どもたちには様々な国の人と会話できるくらいの会話力を身に付けてほしい」と話す。しかし、ミンガラドン地区のようなヤンゴン近郊には英会話教室が少ない。学校の授業で習うのは基本的な文法や簡単な英単語のみ。就職・転職や進学を目指すには授業では扱わない、英語での会話や質の高い読み書きのスキルが必要となる。先進国では当たり前に学校で教えられることが、ミャンマーでは英会話教室に行かなければ学ぶことができないということだ。
2つ目は欧米人とミャンマー人の話す英語にはイントネーションの違いがあるからだ。どの国にも母国語なまりの英語を話す人がいるように、ミャンマーにはビルマ語なまりの英語を話す人が多い。ヤンゴン市内にあるホテルの従業員ゾウさん(40)は「欧米の人はとても早口で話す。ただ、BBCといったニュースで耳にする機会が多いので聞き慣れた英語だと感じる。一方で、聞き慣れないイントネーションの英語を話す人が来ると、理解するのに時間がかかる」と言う。
ミャンマー人英語教師のスキルアップを図るためには、外国人ボランティアの手を借りなければならない。ミャンマーの現在の英語教育について、ヤンゴン大学で英語を専攻するピンキー・ペリーさん(20)は「ミャンマー人の英語教師は、国が定めるレベルの英語教育をきちんと行っていると思う。でも諸外国と比べると英語教師のレベルが低いのも事実。各家庭の経済状況を考えても英会話教室には行かず、学校で英語をしっかりと学べる環境を整えていかなければならないと思う」と語る。