やっぱりスピーキングが大事! ミャンマー式「暗記至上」の教育から抜け出そう

ヤンゴン市北オカラッパ地区にある英語教室「リングア・ワークショップ」で僧侶のシンムーネインダーさん

ミャンマー・ヤンゴン市北部の庶民で賑わう町に、「英語を学びたい!」という意志さえあれば誰でも通える英語教室「リングア・ワークショップ」がある。現在200人程度の生徒を集める人気ぶりだが、その秘密は、誰に対してもオープンという門戸の広さだけではない。ミャンマーの教育に深く根付く暗記中心型の勉強にこだわらず、スピーキングの実践的な練習に特化した教育スタイルにある。

ヤンゴン市北オカラッパ地区にあるリングアワークショップは、民主化を求めたかつての学生運動家のミンウーティさんが2001年に始めた英語教室だ。この英語教室の月謝はたったの1500チャット(150円)。ひとコマ1時間半~2時間で、朝晩週2回開かれる。ヤンゴン市内の他の語学学校は、アメリカ大使館で行われる英語教室が月額換算6万4000チャット(約6400円)、アクティブイングリッシュが月額換算2万2500チャット(約2250円)。これらと比較すると格段に安い。

リングア・ワークショップには、英語を勉強したいパッションさえあれば年齢問わず誰でも参加できる。下は3歳、上は60歳までの幅広い生徒がいる。

ミャンマーでは一般的に、暗記中心型、反復型の勉強を重視してきた。例えば小学校1年生の宿題は、ノート1ページにアルファベットだけをひたすら写し書きする。テスト前にはノートに書いた英語の例文を一字一句間違えないように暗唱して覚えるといった具合だ。

リングアワークショップの元生徒チョーテッポーさん(25)は教室に3年通い、ヤンゴン大学英語学科に入学した。「小中高ではテストに向けた暗記だけで退屈だった。授業で英語を話さなかったのは、英語が嫌いなのではなくて、喋る機会がなかっただけ。この教室のいいところは、スピーキングをたくさん練習できるところ」と語る。

この教室では生徒にお題を与えて英語でディスカッションをさせる。お題は「お金VS成功」や「理想的な結婚」などユニークだ。生徒たちは英語だけでなく、自分の頭で考えることを学んでいく。

英語で時事ネタを共有することもある。「この地区では新聞でもインターネットでもニュースを簡単に得られるが、一人ではその重要さになかなか気付けない。ここの英語教室は、情報をみんなで共有する機会になる」とチョーテッポーさんは語る。

英語を将来本気で使いたいと思っている生徒にとって、通常の学校の英語の授業だけでは物足りないのが現実。僧侶のシンムーネインダーさん(17)は、僧院学校に通いながら、休みの日にこの教室を訪れる。「仏典を勉強するだけでは不十分。何か別のことも勉強しなくちゃいけないと思う。僧院学校の英語は暗記ばかりで話す機会がなかったから、この英語教室に来た。まだはっきりとはわからないけど、将来は大学で英語を教えたい」と夢を語る。

英語教室「リングア・ワークショップ」の元生徒チョーテッポーさん(左)。現在は船乗りを斡旋する会社に勤める

英語教室「リングア・ワークショップ」の元生徒チョーテッポーさん(左)。現在は船乗りを斡旋する会社に勤める