英会話教室が盛り上がりを見せているミャンマーと日本。両国の英会話教室を代表して、ミャンマー・ヤンゴン市北部の「リングア・ワークショップ」と広島県三原市の「ECCジュニア深町教室」の実態を比べてみた。そこで見えてきたのは、日本の教育カリキュラムの充実度と、ミャンマーの英語学習の実用性だ。
■理念
リングア・ワークショップのモットーは「I.C.E.:Initiation(集う)・Cooperation(協調する)・Emulation(高め合う)」。生徒たちは教室に来ると、胸に手を当て「ICE(アイス)」とあいさつする。
ECCジュニア深町教室は「楽しく学んで身につける」「発信力」というスローガンはあるものの、生徒に周知しているわけではない。
■月謝
リングア・ワークショップの月謝は1500チャット(約130円)だ。ミャンマーの私立校の月謝の目安である10万チャット(約8400円)と比べ、格段に安い。リングア・ワークショップは低所得者を主に対象にしており、非営利で運営している。
ECCジュニア深町教室の月謝は6000~1万円。地域や学年を問わず生徒を受け入れ、特に幼少期からの英語能力の向上に力を入れる。日本国内の他の英会話教室の月謝が数万円であることを考えると、ECCジュニア深町教室は日本国内では格安だ。
■生徒数・授業日数
リングア・ワークショップの生徒数は約200人。火・水・土・日曜日に授業が行われ、各クラスは50~70人で構成される。授業のほかには、年に一度の記念行事があり、先生と生徒の全員が参加する。
ECCジュニア深町教室には約40人の生徒が在籍。授業は、毎週月~土曜日の週5日。講師は1人で、各クラスの定員は5人ほどだ。
■カリキュラム
スピーキングとリスニングを重視した授業が展開されていることはミャンマーでも日本でも変わらない。だが、カリキュラムの細部には違いがある。リングア・ワークショップでは、小学生から大人までが同じ「英会話重視の教材」を使い、子ども3クラス、成人1クラスという構成だ。
ECCジュニア深町教室は、幼稚園から社会人までが学年や年齢に応じて計13クラスに細分化される。中高生のクラスには正規の学校の英語学習を補強するコースと、英会話コースの2種類がある。教材は各クラスのレベルに応じたものを使う。また、英語検定対策講座もあり、使用場面やニーズに特化したコースが編成されているのが特徴だ。
■学習目的
リングア・ワークショップに通うミャンマー人は「通訳になりたいから」「外国人を対象とするツアーガイドになりたいから」など、英語を使う職業に就くことを夢見ながら、将来を見据え、長期的に英語能力の習得に励む。
ECCジュニア深町教室の生徒の多くは「学校の授業についていけないから補強したい」「テストの点を上げたい」という短期的な視点で英語を学び始める。親が、我が子の低い学習意欲に嘆き、「勉強の習慣を身につけさせたいから」と通わせているケースもある。
■進路
リングア・ワークショップでは、22~35歳の卒業生の約20%が、外国を訪れたり、海外で就職したりしている。また、ミャンマーでは英語力のある人材は管理職や秘書、通訳・翻訳者として採用されやすいこともあり、リングア・ワークショップの卒業生の約90%がそういった職種または外資系企業に就職する。
ECCジュニア深町教室の場合、テストの点が上がる生徒はほぼ100%だ。しかし、成績が良くなったことだけで満足する生徒が多く、英語を武器に就職するECCジュニア深町教室出身者は10%に満たない。