ミャンマーの大手民間テレビ局「MRTV-4」で、放送する番組を決定する敏腕プランナーを務める女性がいる。ルイソウソウ ジョーさん(29)だ。彼女を含む10人で構成する編集企画部のミーティングでは、海外の番組の中からどの番組を買うかを決める。その判断材料になるのは視聴率とSNSでの視聴者の反応。この2つと同じぐらいルイさんが大切にしているのが、自分自身の「面白い」という感覚だという。
シャン州で生まれたルイさんは、幼いころからのテレビ好き。「中国のアニメや、日本のドラマや映画をよく見た。『おしん』とか懐かしい」。マンダレー大学法学部を卒業した後、迷わずMRTV-4に入社した。「テレビ番組はミャンマー人の生活に浸透している。自分が面白いと思ったことを、たくさんの人と共有したかった」というのが入社の動機だ。
19歳で入社した後、ルイさんは、輸入した番組の字幕制作や番組の完成度をチェックする部署に配属された。2年前から「花形」のプランナーに。「番組を自分で選べて、面白さを届けられるから、今の部署が一番好き。みんなこの仕事には憧れると思う」
プランナーは10人いる。日々の仕事は、韓国のドラマ、英国のドキュメンタリーなどのさまざまな番組を視聴率や視聴者のトレンド、SNSなどの反応などを総合的に加味して評価すること。そのうえで放送する番組を決めていく。「判断基準として大切なのは、視聴率や反響はもちろん、『面白い』という自分たちの感覚」とルイさん。ルイさんは1週間で100本以上のドラマやドキュメンタリーなどの番組を鑑賞する。
ルイさんにとって忘れられない瞬間がある。自らが中心となって選んだ番組が高視聴率を記録した時だ。
土日の午後2~3時に、「ミタスービャン・ブゥエ(家族の対決)」という家族対抗のクイズ番組を放送した。クイズ番組自体はもとから人気だったが、日中の時間に放映することは珍しかった。視聴者も一緒に問題を考えられる、という点に面白さを見出したルイさんは、昼間の時間帯で放送すべきと強く主張した。
結果は大成功。「4~5%が昼の平均視聴率だが、この番組は20%近い数字を毎回出している」(ルイさん)。子どものいる家族を中心に支持を集め、知らない人はほとんどいないというメジャー番組となった。放送開始から1年経った今も人気は衰えていない。
MRTV-4は、ミャンマーにある2つの無料チャンネルのうちの1つ。2000人の従業員を擁する最大手だ。