ヤンゴンから三輪車「サイカー」は消えるのか? 住民に聞いてみた

サイカーの魅力を語るドライバーのスーミンソンさん(右)

ミャンマーの昔ながらの移動手段「サイカー」(三輪の人力車)は消えゆく運命にあるのか。ヤンゴン市中心部の脇を流れるヤンゴン川の対岸にあるダラ地区(貧困層が多いエリア)で、「サイカーは、近年増えているバイクタクシーに取って代わるのか」という質問を、住民10人(サイカーとバイクタクシーの運転手5人、利用者5人)に投げかけてみた。返ってきた答えは全員一致で「サイカーは消えない」だった。

■バイクタクシーは違法

サイカーがバイクタクシーに負けない最大の理由は「合法性」にある。公共交通機関としてミャンマー政府はサイカーを認めている。これに対してバイクタクシーは非公認。バイクタクシーの近年の普及は、政府が黙認している状況の上に成り立っている。

サイカーの運転手であるスーミンソンさん(33)と、利用者のアウントゥさん(50)は「非公認のバイクタクシーが、公認されているサイカーに取って代わるはずがない」と話す。

スーさんによると、とりわけ外国人の間ではサイカーの人気が高い。「サイカーは(人力だから)燃料の補給も必要ない。(温室効果ガスも出さないから)環境に優しい」とサイカーの強みを口にする。

■サイカーは安全!

第2の理由は、サイカーの安全性だ。サイカーの運転手ウィンゾウさん(53)は「バイクタクシーは、二輪で不安定だし、スピードが速くて危険。お年寄りや、ちょっと太っている人は断然、サイカーを好むよ」と説明する。

ダラ地区の病院に勤める医者で、サイカーの利用者であるアウンさんは、患者を家まで送り届けるためにサイカーを使う。「多少狭くて荒れた道でもサイカーなら、安心できる」と安全性を強調する。

■サイカーは生活の一部

第3の理由は、サイカーの利便性だ。便利だから、ミャンマー人の生活に溶け込んでいる。

サイカーの利用者であるトルトルアイさん(35)は「バイクタクシーもよく利用するけど、大きい荷物がある時はサイカーの方が便利」と言う。

別の利用者のララソーさん(60)さんは「速く移動できるのはバイクタクシー。だけど、どんな道でも家の前まで運んでくれるサイカーの方が、親しみが持てるわ」と笑顔で話す。

面白いのは、バイクタクシーのドライバーも、サイカーの利便性を認めている点だ。バイクタクシーの運転手ティンゾウウーさん(38)は、買い物や通勤といったルーチン化した外出が、サイカーの需要に結びついていると指摘する。「バイクタクシーは、サイカーに取って代われないよ。サイカーはミャンマー人の生活の一部になっているから」

経済発展で豊かになっていくなか、サイカーは10年後、20年後、どれぐらい残っているのだろうか。

「ミャンマー人の生活の一部」であるサイカーはいつまで走り続けるのだろう

「ミャンマー人の生活の一部」であるサイカーはいつまで走り続けるのだろう