世界経済フォーラム(WEF)は10月26日、「世界男女格差報告書2016」を発表した。男女格差が少ない世界のトップ3はアイスランド、フィンランド、ノルウェーの北欧諸国。だが途上国に限ると、5位ルワンダ、7位フィリピン、10位ニカラグア、12位ブルンジ、14位ナミビア、15位南アフリカと、サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカ勢が上位に目立つ。主要7カ国(G7)の一角を占める日本は111位だった。調査対象は144カ国。
ランキングの元となる「男女格差指数」は、「経済活動への参加と機会」「政治的なエンパワーメント(政治への参加)」「教育」「健康と生存」の4つの指標をベースにしている。スコアは、男女が完全に平等であれば1.0で、ゼロに近づくほど格差が大きいことを意味する。
「健康と生存」と「教育」の世界平均スコアはそれぞれ0.96、0.95。この2分野の男女格差はさほど大きくない。しかし「経済活動への参加と機会」は0.59、「政治的なエンパワーメント」は0.23と、権力が絡む経済と政治での女性の立場はまだまだ驚くぐらい低い。WEFによると、すべての分野で完全に男女平等の国はいまだなく、トップのアイスランドでも総合スコアは0.87にとどまる。
■「経済活動」の首位はブルンジ
各国のランキングを4つの分野別にみると、就労率や賃金などをみる「経済活動への参加と機会」で男女格差が一番少なかったのは、中部アフリカのブルンジ(スコアは0.86)だった。ラオス、バハマ、バルバドス、ベラルーシ、ボツワナ、ノルウェー、ルワンダ、アイスランド、ガーナが上位10カ国にランクイン。最下位はシリア(同0.27)だ。
女性の就労率が男性と完全に平等(スコア1.0)だったのは、モザンビーク、ルワンダ、ラオス、ブルンジ、マラウイの5カ国。トップ5は、サブサハラアフリカから4カ国、東南アジアから1カ国でいずれも途上国だった。ワースト5は、最下位からシリア(同0.17)、ヨルダン、イラン、アルジェリア、サウジアラビア。
類似した仕事をベースとした賃金の比較では、ルワンダが最も男女平等に近かった(同0.88)。以下、ブルンジ、アルバニア、シンガポール、ノルウェー、フィンランド、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、マレーシアの順。データがある135カ国の中で最下位はアンゴラ(同0.4)で、ワースト2はフランスだった。日本は58位(同0.66)。
また、国会議員や組織の幹部の男女比で、男女格差がまったくない1.0をマークしたのは、ジャマイカ、コロンビア、ガーナ、バルバドスの4カ国。これにフィリピン、ベラルーシ、バハマが続き、上位7カ国を途上国が独占した。先進国トップはラトビアの8位、次いで米国が11位。ワースト5は、最下位(123位)のイエメン(同0.02)、パキスタン、バングラデシュ、サウジアラビア、エジプトの中東・南アジア諸国。日本は下から11番目の113位(同0.13)と低迷した。
■ルワンダ国会議員の64%が女性
「政治的なエンパワーメント」で首位だったのはアイスランド(同0.71)。以下、フィンランド、ノルウェー、ニカラグア、アイルランド、スウェーデン、バングラデシュ、ルワンダ、インド、ドイツ、ボリビア、キューバ、南アフリカの順。ワースト5カ国は、最下位のカタール(スコアは0.01)を筆頭に、下からレバノン、オマーン、ブルネイ、クウェート。日本は103位(同0.10)だった。
国会議員の男女比で完全平等(スコア1.0)なのはルワンダとボリビア。ルワンダの場合、女性の国会議員が全体の64%を占め、男性の36%を大きく凌駕する。ボリビアは女性53%、男性47%。これに続くのがキューバ、スウェーデン、セネガル、メキシコ、南アフリカ、エクアドルなど。最下位(141位)はカタールとドミニカ共和国で、両国は女性議員がゼロ。日本は、国会議員に占める女性の比率が9%で122位だった。
女性の閣僚では、完全な男女平等(スコア1.0)だったのは、フィンランド、カーボベルデ、スウェーデン、フランスの4カ国。とくにフィンランドは女性閣僚の割合が63%にも達する。女性の閣僚がゼロで最下位(139位)だったのがブルネイ、ハンガリー、サウジアラビア、スロバキア、パキスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナの6カ国。対照的に、サブサハラアフリカで最も低かったマラウイでも全体で103位と、ワースト30に入らない。アフリカ女性の政界での活躍がこのデータから見てとれそうだ。日本は50位。
また、過去50年で国家元首を女性が務めたことのある国は世界で55カ国。女性の国家元首のトータル年数が最長だった国はバングラデシュ(23年)。インド、アイルランド、アイスランド、フィリピン、スリランカ、ノルウェーが続く。女性が国家元首を10年以上務めた国は世界で15カ国しかない。うち6カ国が途上国だ。
■イスラム教国がワースト10独占
就学率や識字率などを網羅する「教育」では、スコア1.0を得たのが、フィリピン、ニカラグア、バハマ、バルバドス、ボツワナ、キューバ、ホンジュラス、ジャマイカ、レソトなど24カ国。最下位はチャド(同0.61)。総合スコアで途上国トップのルワンダはこの分野では110位(同0.95)だった。日本は76位(同0.99)。
健康寿命などの「健康と生存」でスコア1.0を付けたのは38カ国にも上った。最下位は中国で、スコアは0.91。
4分野をあわせた総合スコアの最下位(144位)は中東のイエメン。このほか、パキスタン(143位)、シリア(142位)、サウジアラビア(141位)、チャド(140位)、イラン(139位)、マリ(138位)、モロッコ(137位)、コートジボワール(136位)、レバノン(135位)がワースト10。いずれもイスラム教徒が多数派の国となっている。