外務省は12月5日、海外で援護した日本人のデータをまとめた「2015年海外邦人援護統計」を発表した。日本大使館・領事館などが2015年に援護した日本人は前年比1.6%減の2万387人。この中には犯罪に巻き込まれた以外にも、困窮(379人)や精神障害(179人)、自殺・自殺未遂(60人。うち自殺は46人)といった“個人的な理由”も含まれる。
援護対象者を理由別にみると、「犯罪被害」が全体の4分の1に当たる5056人を占めた。次いで「犯罪加害」452人、「事故・災害」421人、「その他」1万4458人。その他には、所在調査や遺失・捨得物、疾病、困窮、精神障害、自殺・自殺未遂などが入る。地域別では北米の6850人が最多で、アジア6540人、欧州4436人、中南米1488人、大洋州491人、アフリカ332人、中東250人だった。
犯罪被害(5056人)の内訳をみると、最も多かったのが、スリや置き引きなどの「窃盗」で4100人。暴力バーやキャッチバー、偽警官、偽ガイド、いかさま賭博、商品詐欺などの「詐欺」406人、羽交い絞めや首絞め強盗、睡眠薬強盗などの「強盗」280人などが続く。強かん・強制わいせつは34人だった。殺害されたのは12人で、うち6人がアジア、3人が中南米で起きた。
犯罪加害(452人)では、不法滞在をはじめとする「出入国・査証関係犯罪」が136人。これに続くのが、「傷害・暴行」59人、スピード違反などの「道路交通法違反」38人、「窃盗」31人、「麻薬犯罪」28人など。このほか、詐欺(21人)や売買春(14人)、強かん・強制わいせつ(9人)に海外で手を染めた日本人もいた。
事故・災害(421人)の4割近くを占めたのが交通機関の事故。151人を数え、うち死者は20人。レジャー・スポーツ事故は41人(死者22人)だった。
その他(1万4458人)では、所在調査(6453人)と遺失・捨得物(3318人)が突出している。これ以外では疾病が746人。病気にかかって死亡したのは406人と、海外で死亡した533人の9割を占めた。
困窮は379人。地域別ではアジアが265人で全体の7割と断トツだった。これ以外の地域は欧州43人、北米40人、中南米11人、中東8人、アフリカ7人、大洋州5人。困窮邦人を男女比でみると男性が4分の3で圧倒的に多かった。また年齢別では20代の68人(うちアジアが44人)が最多で、以下、60代62人、50代56人、40代49人、70歳以上48人の順。アジアで一文無しになる若者の存在が浮き彫りとなった。
精神障害は179人。アジアが72人と最も多く、欧州59人、北米38人、大洋州5人、中東3人、アフリカ2人、中南米ゼロと続く。
自殺・自殺未遂は60人。アジアが27人と約半数に上った。実際に命を絶ったのは46人で、アジア23人、北米9人、欧州8人、中南米2人、大洋州2人、アフリカ1人、中東1人など。自殺は、海外で死亡する日本人の約9%を占めた。
行方不明は55人。内訳は、北米17人、欧州16人、アジア16人、中東4人、大洋州1人、中南米1人。アフリカはゼロだった。
援護件数が多かった在外公館は上から順に、タイ大使館(1028件)、フィリピン大使館(974件)、上海総領事館(927件)、ロサンゼルス総領事館(752件)、ニューヨーク総領事館(669件)。