国連がカバーできない「シリアの国内避難民」に毛布を送りたい! 在日シリア人らが寄付呼びかけ

都内のファミリーレストランで取材に応じるシリアンハンドのホサムさん。東京工業大学で地震学を研究する。防寒具の支援をしようと思ったきっかけは、レバノンで暮らすシリア難民20人が凍死したニュースを2014年に目にしたことだという

凍死するシリア人を1人でも減らしたい――。そんな思いから、在日シリア人らが運営するシリア難民支援団体「シリアンハンド」が、シリア紛争で家を追われた国内避難民(海外ではなく、国内の別の地域に逃れた人たち)に防寒具を届けるための募金活動を始めた。シリアンハンドの中心メンバーのひとりであるホサムさん(40)は「シリア国内には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がケアしていない避難民がたくさんいる。その多くが簡素なテントで暮らし、寒さと闘っている」と話す。

シリアンハンドがシリア国内避難民に防寒具を届けるのは前年に続き2回目。今回は日本で約80万円の寄付を集めることが目標だ。合計200個の毛布と寝袋を日本で買い、トルコに逃れたシリア人が立ち上げた組織「モルハムチーム」に送る。モルハムチームはそれを持って国境を越え、シリア側の国内避難民キャンプに届ける。防寒具は当初、トルコで購入するはずだったが品薄状態になったため、日本で買うことした。

ホサムさんは「シリアの冬は、夜は氷点下になる。日本の飲み会1回分のお金(4000円)で1人のシリア人が冬を越せる。シリア人のために手を貸してほしい。シリア人同士、フェイスブックでつながっている。だからキャンプの状況もすぐにわかる。国連が把握できない小さなキャンプでもシリア人なら助けることができる」と声を大にする。

UNHCRが11月30日に発表したレポートによれば、シリアの国内避難民は約210万人にも上る。UNHCRはすでに、この約6割に防寒具を配布済みで、残りの4割にも順次配っていくとされる。

だがホサムさんは言う。「防寒具をもらえるのはUNCHRに『登録された』避難民だけ。未登録の避難民も、反体制派が支配する地域を中心に大勢いる。こうした人たちは、アサド政権率いるシリア軍や、アサド政権を支持するロシア軍の空爆を受け、着の身着のまま逃げた人が多い」

シリアに対する日本人の関心は低くない、とホサムさん。シリアの現状を伝える講演会を11月6日に横浜で開いたところ、50人の定員が一瞬で満員になった。だが質問されるのは「戦闘やイスラム国(IS)のことがほとんど。シリア紛争の裏にはひもじい暮らしを続ける庶民がいる。募金を通じて日本人と一緒に、シリアの避難民を支えたい」。募金の受付は12月30日まで。

シリアの北部に位置し、トルコとの国境沿いにあるシリア国内避難民キャンプ(ホサムさん提供)

シリアの北部に位置し、トルコとの国境沿いにあるシリア国内避難民キャンプ(ホサムさん提供)