ウェストピッカーから養鶏家に転身した2児の母、子育てと両立の秘訣は“自宅養鶏”!

元ウェストピッカーで現在は2児の母のルーン・ソック・チアさん(28歳)。カンボジア・シェムリアップ郊外にある養鶏場で撮影

「もし養鶏場がなかったら、ずっとウェストピッカー(ごみの最終処分場からごみを拾って売る人)だったかもしれない」と語るのはルーン・ソック・チアさん(28)。彼女は、カンボジア・シェムリアップ郊外にある養鶏場と養鶏訓練所を併設させた「プノンデイ・K.J・ライブストックトレーニングセンター」(NGOダナアジアが運営)でニワトリを飼育する2児の母だ。子育てをしながら少しでも収入を増やすためにウェストピッカーをしていたが、養鶏場で働いている今は仕事と子育ての両立ができるようになった。

ルーンさんは19歳で結婚。20歳で長男を、22歳で次男を産んだ。夫は自宅から自転車で2時間ほど離れた建築現場で働いていた。ルーンさんは子育てに専念していたが、収入を増やすため25歳でウェストピッカーになった。ウェストピッカーの収入は不安定だ。最高月収は25ドル(約3000円)、最低は17ドル(約2040円)だった。

ウェストピッカーだったルーンさんの生活が変わったのは26歳の時。村長が養鶏場の仕事を紹介してくれた。養鶏場でニワトリを育てる技術を身に付け、今ではパートタイムで月収60ドル(約7200円)を稼ぐ。ウェストピッカー時代の2倍以上だ。

2人の子供を持つ彼女が養鶏の仕事と子育てを両立できる理由は、養鶏の知識があれば、家でニワトリを育てて販売できることだ。ルーンさんはすでに家でも養鶏を始めた。飼育は、建設労働者の仕事を辞めた夫の担当だ。養鶏の方法はルーンさんが夫に教えた。自宅で働く夫に子供の世話を任せられるため、ルーンさんは養鶏場に働きに行ける。自宅ではニワトリに加えてブタも育てている。利益は月平均50ドル(約6000円)だ。

「夫に仕事を辞めてもらって、家で養鶏を始めるのは怖かった。ニワトリがもし病気になったら、売れなくなる。でも困ったときは養鶏場の先生に相談できたから、売り物になるまで育てることができた」。ルーンさんは成功の秘訣をこう語る。

2人の息子は8歳と6歳になった。自宅で養鶏を始める前は当時4歳の次男を職場に連れて働いていた。次男も小学校に入学した今、2人の子供は養鶏場の敷地内にある英語教室にも通っている。

養鶏場はまた、2人の子供を抱えるルーンさん一家の食事も支える。養鶏場の中に畑があり、ナスやクロック(ウリ科の野菜)などを従業員らは育てている。収穫した野菜を持ち帰ることも可能だ。「養鶏場の人たちはみんな優しいし、収入もウェストピッカーの時と違って安定した。今はとても幸せだ。これからもずっと養鶏の仕事を続けていきたい」(ルーン・ソック・チアさん)