夢はガールズカフェ!? ヤンゴン貧困地区の三輪自転車「サイカー」運転手が語る

ミャンマー・ヤンゴンのダラ地区で客を乗せて走るサイカー

「ガールズカフェをやりたいんだ」。そう語るのは、ミャンマー・ヤンゴンで貧しい人が集まるダラ地区でサイカー(自転車にサイドカーがついた乗り物)の運転手アウンモーウィンさん(30歳)。その日暮らしの生活で貯金できないので、子どものため、自分の老後のために貯金できる仕事としてガールズカフェの運営を夢見る。

サイカーの仕事は重労働だ。ヤンゴンの3月は日中40度を超えることもある。「炎天下で朝8時から夜9時半までサイカーをこぐと疲れる。ときには同時に3人も乗せることもある。サイカーは毎日お金が手に入るから始めたけど、やりたい仕事じゃないんだ」(アウンモーウィンさん)

1日の収入は多いときで1万5000チャット(約1500円)、少ないときは5000チャット(約500円)。サイカーのレンタル代として1日1000チャット(約100円)を払う。売り上げはその日の運次第。「日々の生活は厳しい。実は8万チャット(約8000円)の借金もある」と悩みを打ち明ける。

その日暮らしから抜け出すためにアウンモーウィンさんが思いついたのがガールズカフェだ。まだアイデア段階だが、着眼点はユニークだ。

ヤンゴンの街中ではいま、おしゃれなカフェが続々とオープンしている。「でもほとんどのカフェでは男性が飲み物を持ってくる。店員が男性の場合、店の人気を決めるのは、紅茶やコーヒーの味。でも僕はガールズカフェをやりたい。もしウェイトレスがかわいい女の子だったら男はきっとタバコよりも中毒になって、1日3回はお店にやって来ると思うよ。サービスで勝負したいんだ」とアウンモーウィンさんは目を輝かせる。

アウンモーウィンさんは実は小学校しか卒業していない。でも英語を独学で学び、流暢に話す。サイカーの運転手で終わるような人ではない。「カフェのビジネスは成功するとよく聞く。ミャンマーで一番ホットなビジネスだと思う。家の近くにオープンしたい。交差点の角に店を出せれば、お客さんがたくさん来る」

ガールズカフェで稼ぎたいと話すアウンモーウィンさんには、子どもを思う親心がある。「ミャンマーでは子どもが自分の給料を親に分ける習慣がある。でも僕は、3人の子どもたち(11歳、6歳、3歳)が将来働くようになったら、自分で稼いだお金は自分のために使ってほしい。子どもたちに迷惑をかけないよう老後のために貯金したいんだ」

ガールズカフェで稼いだお金は、子どもの学費に使いたいとアウンモーウィンさんは言う。「子どもたちには最低でも高校を卒業させてあげたい。大学はお金(学費や教科書代)が高くて難しいかもしれないけど‥‥」

ちなみにミャンマーの大学の学費は、公立のナショナル・マネジメント・カレッジ経営学部の場合、年間14万チャット(約1万4000円)。これに加えて、学費より高くつく教科書代を負担しなければならないという。

自宅をバックに立つアウンモーウィンさん。アウンモーウィンさんの自宅は広さ30平方メートルほど。トイレも、キッチンもない。不法に占拠する形で建てられている(ヤンゴン・ダラ地区)

自宅をバックに立つアウンモーウィンさん。アウンモーウィンさんの自宅は広さ15平方メートルほど。トイレも、キッチンもない。不法に占拠する形で建てられている(ヤンゴン・ダラ地区)

アウンモーウィンさんが自宅で振る舞ってくれた甘い紅茶。インドのチャイのような味。ミャンマーではよく飲まれる(ヤンゴン・ダラ地区)

アウンモーウィンさんが自宅で振る舞ってくれた甘い紅茶。インドのチャイのような味。ミャンマーではよく飲まれる(ヤンゴン・ダラ地区)