ミャンマー・エーヤワディー管区出身のトゥントゥンニさん(18歳)は、AAR Japan(難民を助ける会)が障がい者のためにヤンゴンで運営する職業訓練校で学ぶ。この4月で3カ月半の「理容美容コース」を卒業する予定だ。倍率2~3倍の選考をくぐりぬけたトゥントゥンニさんには、貧しい家庭出身だからこそチャンスを逃さない意地がある。
トゥントゥンニさんが交通事故に遭ったのは7歳の時だ。「バイクにひかれ、気がついたら病院にいた。目が覚めたら僕はうまく歩けなくなっていた。両親から足のけがのことを聞かされた」
その時から彼に両親は気を遣うようになり、また周囲は同情した。周りの振る舞いが彼に「障がい者」だということを知らしめた。経済的な事情で中学校には進学しなかった。働く母に代わって家事をした。
トゥントゥンニさんがAAR Japanの職業訓練校に応募したのはおじの紹介がきっかけだ。両親は自分たちが死んだ後、息子の面倒をみられなくなることを心配し、自立してほしいと応募に向け彼をサポートした。
理容美容コースで学ぶ生徒は18人。カット、カラーをマネキンや友だち同士で毎日練習しあう。ときには近所の人に無料でカットすることも。このコースでは卒業までに約100人のヘアをカットし、実践経験を積む。「職業訓練校の環境すべてに満足している。寮生活では友だちもできたし、授業では先生から多くを学べる」とトゥントゥンニさんは話す。
卒業後はヘアサロンでアシスタントとして働きながら、カットやカラーの技術をもっと高めたい、と意欲を見せるトゥントゥンニさん。夢は、地元のエーヤワディーでいつか自分のヘアサロンを開くことだ。
理容師の給料は決して高くはない。トゥントゥンニさんによると、アシスタントで月5万チャット(約5000円)、ヘアサロンを開いても月7万チャット(約7000円)。これは、最低限の暮らしがギリギリできる金額だ。
ヘアサロンを開業し、それを経営し続けることは簡単ではない。トゥントゥンニさんは「困難にぶつかることもあるかもしれないが、それを乗り越える勇気をここ(AAR Japanの職業訓練校)でもらった。一番大切なのは強い心を持っていること」と将来の展望を見据える。