年間60億チャット(約6億円)。これは、ミャンマー・ヤンゴンに本社を置く伝統医薬品メーカー「メガパワー」の1年の売り上げだ。薬の値段は1びん500~4000チャット(約50~400円)とかなりリーズナブル。同社のマーケティングマネージャーのミミカァさん(32)は「貧しい人を含むみんなに、うちの薬を買ってもらいたい」と話す。
伝統医薬品で国内2番手のメガパワーはヤンゴン市ヤンキン地区に直営店をもつ。このほか、シティマートやオレンジなどの大手地元スーパーに卸す。マンダレーやシャン州タウンジーでも売っている。年間の売り上げは60億チャット、利益は12億チャット(1億2000万円)にものぼる。
儲けが大きいのはコスト削減に力を入れているためだ。業界首位のフェイムがテレビ広告を積極的に打っているのに対し、メガパワーは最低限に抑えている。また、フェイムは薬のパッケージに凝っているが、メガパワーはさほどお金をかけていない。
メガパワーの薬の値段は一般(西洋医学)の薬と比べて高くない。一般の1日分のかぜ薬で250チャット(約25円)なのに対し、メガパワーの場合、1カ月分以上で最も安いもので500チャット(約50円)、3カ月分で最も高いものは4000チャット(約400円)。薬の値段を安く抑えている理由についてミミカァさんは「お金持ちの人だけではなく、貧しい人たちにも薬を使ってほしい」と説明する。
メガパワーのユニークなところは、薬の原料の調達方法だ。地方の森に行き、その周辺の住民と交渉してできるだけ安い値段で原料を手に入れる。メガパワーの薬の生産プロセスには、森の周辺の住民がかかわっている。作る人も買う人もいわゆる庶民の人たち。まさにメガパワーは「庶民の庶民による庶民のための薬」であるのだ。
西洋の医薬品開発では、製薬会社の特許の長さや延長が薬価を高騰させ、利益を独占している問題が起きている。薬はいったい誰のものなのか。効能はさておき、伝統医薬品には「薬はみんなのもの」というスピリットが根付いているといえそうだ。