ヒン(カレー)やモヒンガー、ラペットウに代表されるミャンマー料理は、油を多用することで知られる。暑い気候も影響してか、塩分も強め。世界保健機関(WHO)が2014年に発表したデータによると、ミャンマー国民のおよそ4人に1人が高血圧患者であるといわれる。家族の食卓を支えるヤンゴンのお母さんたちに「ミャンマー料理は健康に悪くないですか」と聞いてみた。
■「今さらやめられないわよ」
ミャンマー料理が健康に悪いと認めるのは、ヤンゴンのダウンタウンの喫茶店に家族5人で来ていたティンティンテイさん(50)だ。「脂っこくてしょっぱいから、ミャンマー料理は確かに健康に悪いわ。でも、昔からずっと食べてきたし、今さらやめられないわよ」と語る。毎朝のモヒンガーはティンティンテイさん一家にとって欠かせない料理だ。
レストランを経営するミンミンエイさん(40)は「外国人にとってミャンマー料理は、脂っこくてしょっぱいかもしれないけど、ミャンマー人にとってはこれが普通。それに、揚げた方(ミャンマー料理には揚げ物も少なくない)がおいしそうじゃない」と語る。ミャンマー料理のポイントは、食欲が沸く「酸味」「辛み」「塩味」だと熱弁を振るう。
ミャンマー料理は健康に良いと主張する人もいる。高血圧の症状をもつミンズーテイさん(32)は「ミャンマー料理は健康的な食べ物だと思うし、何よりおいしいじゃない」と話した。
■ピーナッツオイルで健康配慮
家族の健康のために、ミャンマーのお母さんたちは食事面で何に気をつけているのか。ティンティンテイさんは「塩をあまり使わないようにしているわ。しょっぱいのはあまり好きじゃないし。あと、魚と野菜は多めにとるように心がけている」と語る。
ミンミンエイさんが経営するレストランでは、普通の油より値段が高いが、高血圧の予防効果があるとされるピーナッツオイルを使う。「お客さんの健康を第一に考えて、体に良いものを使うようにしているわ。味の素は健康に悪いから使っていない」と話す。
ミンズーテイさんは「自分は高血圧持ちだから、油分と塩分を控えめにするようにしている。月に1回、日本食レストランへ家族全員で出かけるのが楽しみよ」と笑う。
「健康のために、ミャンマー料理を食べるのをやめられますか」とティンティンテイさんら3人に聞いた。すると返ってきた答えは「そんなの考えられないわよ!」。
ケンタッキーフライドチキンの1号店が2015年にヤンゴンにオープンするなど、大手のファストフード店が続々と進出するミャンマー。脂っぽいミャンマー料理とジャンクフードが相まって、高血圧や糖尿病といった生活習慣病がこれから大きな問題になっていきそうだ。