検閲廃止から5年経ったミャンマー、50人中26人が「新聞は良くなった」

路上の新聞・雑誌売り。種類は豊富だ(ミャンマー・ヤンゴン)

ミャンマー政府が事前検閲を廃止して5年、ヤンゴンのダウンタウンで暮らす50人に新聞がどう変化したのかを聞いたところ、26人が「紙面が良くなった」と回答した。最大の理由は、民間企業が発行する新聞が登場したことで、情報量が増えたこと。ただその一方で、ソーシャルメディアの台頭を受け、若者の新聞離れが進んでいることも浮き彫りとなった。

聞き取りした50人のうち「新聞をほぼ毎日読む」と答えたのは6割に当たる30人。うち26人が「検閲が廃止されて、紙面が良くなった」と答えた。新聞の数や情報量が増えたことを評価している。

ティンテンオーさん(34歳、男性)は「私はあまり多くの場所に行ったことがない。民間の新聞が増えたことで、国内外で起きたことが分かるようになった」と喜ぶ。検閲があった時代のミャンマーには、政府が発行する2つの新聞しかなかったという。ところが今では「デイリーイレブン」「セブンデイデイリー」「デモクラシートゥデイ」など民間企業が発行する新聞が15紙以上ある。

新聞をほぼ毎日読む30人のなかで一番人気だったのは「デイリーイレブン」だ。続いて「セブンデイデイリー」「デモクラシートゥデイ」「ミャンマータイムス」など。複数の新聞を読む人が多く、1紙しか読まない人は少数派だった。国営新聞では「ザ・ミラー」を読む人が7人いた。

新聞を読んでいても、記事の内容を信じるかどうかは別問題だ。新聞は良くなったと評価する26人のうち16人が「信じる」、9人が「半分ぐらいしか信じない」、1人は「あまり信じない」と答えた。

新聞を信じるテッスーさん(30歳、男性)は「今は何を読んでも自由だし、記者が独立して記事を書いているから信用できる」と説明する。半分しか信じないと答えた人たちは「政府関連の記事はあまり信用しない」と語る。

新聞をほぼ毎日読む30人のうち21人は「政治、経済、国際情勢などの情報がもっとほしい」と注文を付ける。ピアイニェインさん(53歳、男性)は「ミャンマー政府が税金を何にいくら使っているのか、これから何に使う予定なのか、についてもっと明確な情報がほしい」と言う。

調査した50人のうち、「新聞はまったく読まない」と言い切ったのは20人。この大半を占めたのが若者だ。だが新聞を読まなくても、オンラインニュースサイトやフェイスブックといったソーシャルメディアを使って情報を得ている。関心事は政治、経済、国際情勢という。

2011年に民政移管し、12年に事前検閲がなくなったミャンマー。新聞業界にとっては“開国”が訪れたと同時に、ソーシャルメディアの波という“別の戦い”が待ち受けているといえそうだ。