犬を食べるのは残虐なのか? インドのナガ族「犬肉はごちそうだ!」

ニンニク、タマネギ、ターメリック、トウガラシ、塩で調理した犬肉。犬肉をおいしく食べるには調理法が肝心という

インド北東部のナガランド州が「犬食」の是非をめぐって揺れている。動物愛護の観点から国内外で犬を食べることをやめるようにとの圧力が高まる一方で、同州の人口の約9割を占めるキリスト教徒のナガ族は強く反発している。ナガ族の男性カシュンさん (25)は「犬肉はごちそう。うまく調理すれば、何よりもおいしい」とナガ族の伝統文化だと強調する。

ナガランド州の隣りにあるアッサム州の警察は5月4日夜、アッサム州からナガランド州へ密かに輸送中であった75匹の犬を「救助」し、動物虐待防止法に違反したとして犬を輸送していた4人の男性を逮捕した。インドの複数の新聞が報じた。犬は吠えないよう口をひもで縛られており、75匹のうち22匹は飢えや窒息ですでに死んでいた。4人は、野良犬を捕まえてナガランド州最大の都市ディマプールの市場で売ろうとしたことを認めたという。

インドでは1960年に動物虐待防止法が制定されたが、違反しても罰金は10~50ルピー(20~100円)に過ぎない。インドの動物福祉団体ピープル・フォー・アニマルは、動物の虐待を禁止するためにはもっと厳しい法律が必要との見方を示している。

ナガランド州での犬食は常に議論の的となってきた。2016年7月、アッサム州の実業家の要請を受け、ナガランド政府内部で犬食を禁止する動きもあったが、州法を制定するには至らなかった。

犬食を禁止しようとする動きに対して、ナガランド州内では反発する声が根強い。カシュンさんは「北東部以外のインド人はナガ族を『犬食い』と呼び、差別する。だが、犬を食べる文化は私たちの誇りだ」と語る。ナガ族の牧師(38)はganasの取材に対して「ナガ族は年寄りから子どもまで犬肉が大好き。よっぽどの理由がない限り食べるのは止めない。そもそも私は、動物を家で飼ってかわいがることにあまりいい気がしない。動物よりまず人を愛すべきだと思う」と漏らす。

ナガ族にとって、犬肉は味が良いだけではない。高い栄養価と薬用価値があると考えられているという。ナガ族伝統のレスリング大会の前には犬肉を食べて臨むのがお決まりだ。出産後の女性が犬肉のスープを食べることも多い。

こうしたなか台湾は3月11日、アジアで初めて犬を食べることを違法にした。世界的な動物保護組織のヒューマン・ソサエティ・インターナショナルは台湾の新法を称賛。「これをきっかけに、中国、インドのナガランド州など、いまだに残虐な犬肉の取引をする地域も変わっていくだろう」と期待を寄せる。

肉食へのタブーの印象が強いとされるインド。だが、ナガ族はあらゆる肉を食べる。特に猿肉のスープは、飲めばどんなに疲れていてもすぐに体力が回復するのだという。「ナガ族は進化論を信じてない。だから猿も食べる。もし人間が猿から進化したっていうなら食べない」とカシュンさんは話す。

インド・ナガランド州最大の都市ディマプールの中心部で売られる犬肉

インド・ナガランド州最大の都市ディマプールの中心部で売られる犬肉