慶大生らが招待した東ティモールの大学生が日本へやってくる! 「医者不足を解消する糸口を探したい」

東ティモール国立大学1年生のエスメラルディト・フェレイラさん。「医者として働きながら、保健省とも協力して医者の数を増やす活動をしたい。新しい国・東ティモールで病気に苦しむ人を助けたい」と夢を語る

東ティモールの大学生4人が8月2日から、慶応大学の学生団体S.A.L.のクラウドファンディングで募った旅費を使って日本を訪れる。東ティモール国立大学1年のエスメラルディト・フェレイラさんもそのひとり。医者になるのが夢という彼は、東ティモールの医者不足を解決する糸口を日本で探したいと話す。

フェレイラさんら東ティモール国立大生4人は8月2~14日の13日間、日本に滞在。宮城県気仙沼市の病院や都内の国会議事堂を見学する。東ティモールから4人を日本に招待するためS.A.L.は、クラウドファンディングを使って90万円以上を得た。プロジェクトリーダーは慶大2年の立道友緯さん。「日本の良い面だけでなく、悪い面も知ってほしい。東ティモールのこれからの発展の糧にしてもらえれば」と意気込む。

フェレイラさんが来日を決めた理由は「東ティモールの医者不足の現状を変えたい」からだ。「医者や看護師といった人的資源が足りない。だから不健康な人も多い。医療に携わる人の数を増やすことが急務だ。病院の見学だけでなくて、日本の日常的な生活にも触れ、日本の健康問題を知りたい」と言う。

立道さんもこれまで、医師が足りない東ティモールの医療現場を目の当たりにしてきた。2017年3月に東ティモール南東部のアイナロ県にあるマウビシ地方病院に行ったとき「東ティモール国籍の医者がひとりもいなかった。外国から派遣された医者ばかりだった」と驚く。

世界保健機関(WHO)によると、人口約126万人の東ティモールの公共医療施設で働く医師、看護師、助産師の数は合わせて1407人(2010年)のみ。医療従事者の不足が東ティモールの脆弱な医療システムの最大の問題点だとWHOは指摘する。

フェレイラさんにとって、医者になり、東ティモールの医者不足を解決するのは10歳のときからの夢だ。「祖父が体調を崩したとき、薬を満足に処方できる人がいなかった。そのときの経験が、医者を志すモチベーションになっている。自分が小学生のころは、今よりもっと医者が少なかった」と振り返る。

アジアで一番若い国東ティモールは、1999年に実施された独立を問う住民投票を経て、2002年に独立した。立道さんは「働き盛りの30~40代は1975〜1999年のインドネシア支配からの独立戦争のさなかで育った。戦争のために教育が十分に行き届かなかった結果、医者になる素質をもつ知識層が少ない」と語る。

フェレイラさんらが訪れる女川や気仙沼といった東日本大震災の被災地では、復興活動が依然として続く。東ティモールもまた、独立戦争から立ち直ろうとしている。お互いの境遇が似ているからこそ、東ティモールの大学生らが日本で復興のヒントを見つけることもできそうだ。