今年、ヤンゴン郊外で女性専用ホステルが完成した。「ミャンマーの女性たちは結婚後、ほとんど働きに出ない」。ホステルを創設した女性起業家は古くからあるこの習慣を無くすべきと考えている。働く女性の地位を確保する目的でつくられたこの施設には就職支援トレーニングセンターが併設されている。「外に出て働くことが怖いと思わなくなった」と、トレーニングプログラムはゲストの人気を博している。
■ミャンマー唯一のトレーニングセンター付きホステル
「女性たちよ、働きなさい」。製薬会社を起業したチーチーウィンシュイさん(46)は主張する。彼女に共感した女性たちとともにヤンゴンの郊外に女性向けホステル「チーチーズハウス」を創設した。ミャンマーには女性専用ホステルがいくつか存在する。チーチーズハウスの最大の売りは女性の自立支援を推進するためのトレーニングセンターである。
トレーニングセンターではリーダーシップスキルやビジネススキル、英語など社会で働く技術を学べるだけでなく、彼女たちの身体と心のケアも行う。ネイティブスピーカーによる英語教室やインド人によるヨガ教室、メイクアップ講座などその内容は多岐にわたる。ゲストたちが制作したハンドソープや化粧品を販売する活動も行っており、参加者は毎月100人にのぼる。
チーチーウィンシュイさんは、自身のビジネスマンコミュニティーの強い輪を生かし、就職仲介の仕事もする。ゲストが書いた履歴書を参考に彼女たちに最適な職を案内する活動を無料で行っている。
■悪しき固定観念
チーチーウィンシュイさんはミャンマーでは女性は家を守るべきであるという古くからの観念がまだ根強く残っているという。結婚後は主婦業に専念するべきであり、外に出ていく必要は無い。子どもを授かった後は子どもを守る責任を果たすだけで良いとされているという。25歳以降で未婚である場合「結婚していないなんておかしい、と周囲の人間から言われる」と、チーチーウィンシュイさんはこの習慣を問題視する。「女性でも働きに出て自立できると信じることが大事」と話す。
働くことに対する抵抗をなくし、自信をつけるという狙いは実を結びつつある。「ここに来るまで働き方なんて全く知らなかった」カイカイソウさん(45)は夫を亡くし途方に暮れていた当時をそう振り返る。現在はホステルのスタッフとして働きながら女手一つで二人の子供を育てる。「今は働く女性としての自信がついた」と将来に対して前向きである。
チーチーウィンシュイさんは、今後トレーニング施設を併設した女性専用ホステルをミャンマー全域に建てたいと考えている。「正しい道は明るい未来をもたらす」は彼女の座右の銘である。技術を身につけた女性は、明るい未来に続く道を自ら切り開いて行けるのだ。