「夢はジャーナリスト」、16歳で親元を離れた首長族の女性

カヤン族伝統の衣装を身に纏うニムさん。カヤン族の女性のなかには首に真鍮のリングをはめる人とそうでない人がいる。ニムさんは普段リングをはめていない(写真:ニムさん提供)

「私の故郷には大学がない。だから高等教育を受けたいならヤンゴンに行くしかなかった」。そう話すのは、ミャンマー東部のカヤン州から6年前にヤンゴンへやって来たという22歳の首長族の女性であるニムさんだ。発展著しいミャンマーでは、都市と地方の間で教育格差が拡大しており、彼女のように高水準の教育機会を求めてヤンゴンのような大都市に移る若者が多い。

■大学がない!仕事もない!

生まれ育ったカヤン州の村には高校までしかない。そのため、高校を卒業したら働くか進学のために故郷を離れるかの決断を迫られる。しかし、地元には十分な仕事がないうえ、稼ぎの良い仕事に就きたいのであれば高等教育を受けていなければならない。そのため、両親に勧められてヤンゴンの専門学校に進んだ。

ヤンゴンで勉強するうちにジャーナリズムに関心を持つようになる。故郷のことをより多くの人に知ってもらい、地域振興につなげたいからだ。彼女に自身の故郷について尋ねると、顔をほころばせながらこう話してくれた。「とても小さい町だけど、空気がきれいだし近所の人との距離も近い。家の窓や戸を開け放していても平気なくらい穏やかな所なの。私は自分の故郷が好き」

現在はヤンゴンでジャーナリストの卵として活動している。ニムさんが初めて執筆した記事は、故郷のカヤン州にある洞窟について取材したものだったという。そんな故郷愛の強い彼女に今後もヤンゴンで働き続ける意思があるか尋ねると、「今はヤンゴンにしか良い仕事がないからここにいるけれど、いずれは故郷に帰って自分の町を盛り上げるために働きたい」という答えが返ってきた。

■ナガもシャンもラカインも教育格差に悩んでいる!

ミャンマーには135の民族が存在しており、少数民族の中には地方に居住する部族も多い。地方出身の少数民族にも話を聞いてみた。取材をしたのは、ナガ族の男性のバン・ランさん、ラカイン族の女性のキン・ミャ・ミャ・チャウさん、そしてシャン族の女性のナン・ヌン・モサンさんである。彼らは皆ニムさんと同様に、より水準の高い教育を求めて高校卒業後にヤンゴンにやって来た。このような地方出身の若者たちは、故郷では十分な教育機会が得られないと嘆く。なかには小学校しかない地域もある。

ヤンゴンのような大都市には、多くの大学や専門学校のような教育機関が集まる。稼ぎの良い仕事が得られるのもヤンゴンだ。シャン族のナン・ヌン・モサンさんは「学んだ知識を生かせる仕事はヤンゴンにしかなさそうだ」と考えている。そのため、卒業後はヤンゴンに留まって働き続けたいという。

ヤンゴンで勉学に励む彼らに将来の夢を聞いてみた。ビジネスで成功したいナガ族のバン・ランさん、バリバリのキャリアウーマンを目指すラカイン族のキン・ミャ・ミャ・チャウさん、そして起業する傍らで女優のマネジメント業にも着手したいというシャン族のナン・ヌン・モサンさん。印象的なのは、それぞれが自分の目標を確立していることだ。地方と都市の教育格差が大きいことはミャンマーが抱える課題の一つであろう。しかし大望を抱く若者たちが集うヤンゴンは今日も活気に満ちている。