「学校が教えてくれないので、うちが教えます」、いまミャンマーの民間教育団体がアツい!

ウィング・インスティテュートのピョー・ピョー・アウンさんは、中国人の祖父を持つ。「どのような出自であっても、人権は守られるべき」と、民族紛争の終結を願う

公立学校の教育だけでは不十分だと感じ、教育の力で国を変えようと奔走する民間団体がある。国内各地でいまも続く民族紛争の解決のための活動を行ったり、パソコンや英語などの実学を無料で学べる場を提供したりするほか、批判的思考力を養うためのディスカッションの授業を行う取り組みもある。

「ビルマ族以外の民族や、仏教以外の宗教に関して学ぶ機会がほとんどない。ビルマ族中心の教育が行われているのが問題だ」こう語るのは市民団体「ウィング・インスティテュート」でコーディネーターをしているピョー・ピョー・アウンさん。例えば、歴史的に数世紀にわたってビルマ族と争い続けてきたモン族にとっては英雄とされるモン族の人物が、歴史の教科書においてはビルマ族、つまり国家の敵として説明されるという。ミャンマーには多様な民族が暮らしているのにも関わらず、教育現場では語られる歴史はビルマ族からの観点に偏っている。

そこで、ウィング・インスティテュートでは民族和解のための活動を行っている。例えば、カチン州へのスタディーツアーだ。カチン州と言えば、カチン独立軍とミャンマー国軍の武力紛争が続いている地域だ。スタディーツアーではカチン州の電気が行き届いていない村を訪れ、参加者と現地の村人とこれからの村の発展や民族和解についてディスカッションを行うという。「参加者たちは他の民族が直面する問題を知ることができる。その上、ディスカッションを通して思考力を養うことができ、一石二鳥だ」とピョーさんは言う。公式に認められているだけでも135の民族が暮らしているミャンマー。「民族間の紛争を解決するためには異文化への理解を深めることが大事だ」とピョーさんは語る。

一方、パソコンや英語など実際に役立つ実学を教える無料の教育センターもある。運営者のアウン・パインさん(22)は「政府や公立学校が教えてくれないことを提供するのがこのセンターの役割だ」と誇らしげに語る。このセンターでは批判的思考力の育成とグループワークを意識しながら授業を行っている。例えばディスカッションの授業ではセンターのファンドレイジングの方法を参加者で議論し、組織の運営に生かしているそうだ。開講日は不定期だが、学生から社会人、時にはお坊さんまで50人前後が集まるという。

ヤンゴン市郊外の高校生向けのフリースクールでは、従来の暗記型学習で欠落していた、思考力を養うため、問題解決型のロールプレイングを行っている。生徒一人ひとりに役を与え、途中で生じた問題をみんなで話し合い、解決策を考えるというものだ。

ミャンマーの教育システムには改善すべき点が山積みだ。しかし、公立学校で解決できない問題にしっかり向き合い、足りないのなら自分たちが提供しようという情熱を持った市民がいる。こうした情熱が、学校の外から子供たちを支えている。

アウン・パインさん提供。尼さんも学びに来ているのが印象的だ。この時はエクセルの活用法について講義したという。「寄付してもらったパソコンや、寄付金で買った中古のパソコンを使っている」そうだ

アウン・パインさん提供。尼さんも学びに来ているのが印象的だ。この時はエクセルの活用法について講義したという。「寄付してもらったパソコンや、寄付金で買った中古のパソコンを使っている」そうだ