ミャンマーの最大都市ヤンゴンにある「ナショナルマネジメントカレッジ」には政府が運営している学生寮がある。そのうち、女子寮では約300人の女子学生が生活を送っている。部屋代は月に約30000チャット(約3000円)と家計にやさしい価格設定だ。
ただし、門限は6時。政府運営でない他の寮に比べてルールが格段に厳しいという。寮生は、規則を破れば1回につき10000チャット(約800円)の罰金を取られる。一日当たりの最低賃金が3600チャット(約290円)のミャンマーでは、3日分の稼ぎに。代表的な麺料理「モヒンガー」では、20杯を食べられる計算だ。
一方、同大の男子学生が住む寮の門限は22時。男女では門限の差が4時間もある。女性を差別しているように感じられるが、ミャンマーでは古くから「女性が夜に出歩くことは危ないことであり、品位を下げる」とされており、その考え方が女性寮内のルールにも反映されているのだという。女子寮はもちろん、男子禁制だ。許可なく立ち入ろうとすると怒号が飛ぶ。
この門限に異を唱えている学生もいる。女子寮生のシュンラエイーピュンさん(2年)は「門限を緩めてほしい。学校帰りに塾に通いたいけれど、門限があるので諦めている」と語る。ミャンマーでは意識の高い学生は、スキルアップのために英語やコンピューターなどの塾や専門学校に通う。コミュニケーション力や論理的思考力など大学では学べないような実用的なスキルを得て、自分磨きをする。その機会を奪われているとの不満が高い。しかし一方で、食い盛りの女子大生には、ベッドの上でぱくつくスナックが切れた際に、コンビニに買いに行けないなど、意識高くない悩みもある。
しかし一方、寮の管理をする教師は、「教師として女子学生の安全を守りたいので、ルールを緩めることはできない」と歩み寄る姿勢を見せない。地方出身の学生の両親は「ヤンゴンは危ない場所」というイメージの大都会で暮らす我が子の身を案じている。夜のデートもできない状態なので、悪い虫がつく心配もない。
そのため、あえてルールの厳しい政府運営の寮に娘を入れて、教師に管理を任せる親も多いそうだ。教師は親の代わりに学生の様子を監視する「親の代理人」のような役割を果たしているのだ。
娘の初デートに父親が同伴することがあるとさえ言われるミャンマー。どこの国でも、親の子離れは難しいようだ。