デザインの力で平和を実現したい―—。こう語るのは、中部アフリカのブルンジで養蜂を通じて紛争被害者の自立支援に取り組むNGO「テラ・ルネッサンス」(京都・五条)の小田起世和(きよと)氏(28)だ。デザイナー出身の小田氏は「デザインという強みを生かし、世界平和の実現に貢献したい」と意気込む。
デザインの力が生きたエピソードがある。テラ・ルネッサンスは2015年4月、ブルンジ北西部のムランビヤ県キガンダ郡カネグワ村で養蜂ビジネスを通した自立支援を開始。2016年1~3月にはこの地域で採れた蜂蜜を「アマホロハニー」(アマホロは平和という意味)として試験的に300個販売したところ、すべて売り切れた。この結果、受益者は約3万4000円の収入を得たという。これはブルンジの平均月収(約5000円)の約7倍だ。
小田氏はアマホロハニーのラベルのデザインを担当した。デザインはカネグワ村の住民の意見を取り入れて考えたという。最終的には養蜂に必要な花から着想を得た花柄のデザインに決定した。同氏は「花柄のデザインはキガンダ村の女性のアイデアを参考にした。カネグワ村の住民を含め、現地に根差すものを生かすことが紛争被害者の自立につながると信じている」とデザインにかける思いを打ち明ける。
小田氏によると、ブルンジで市販される蜂蜜はラベルがないものがほとんど。「デザインのお陰で売れ行きが良くなったとは正直、断言できない。でもテラ・ルネッサンスの現地職員やキガンダ村の住民は『良いラベルだね』と話してくれた。デザインの力を実感した瞬間だった」と同氏は喜びを噛みしめる。
小田氏が現在担当するのは、ファンドレイジング(資金調達)と広報だ。仕事の7割はファンドレイジング。パンフレットの作成などデザインにかかわる業務は多くない。これについて小田氏は「デザインは他者とのコミュニケーションで作っていくもの。ファンドレイジングも同じだ。今はデザインをする感覚で仕事をしている」と持論を述べる。
テラ・ルネッサンスで働くまで、デザインで世界がどう変わるのか分からなかったと話す小田氏。「ファンドレイジングは寄付が増えたり、支援者が増えたりすることで、成果が目に見える。支援者が増える度に、世界平和に近づいていることを実感できる」
小田氏は長崎出身の被爆3世。高校生の時に核廃絶を訴える「高校生1万人署名活動」に参加し、平和に関心をもつようになった。大学卒業後はデザイン関係の会社に就職。だが就職した会社はわずか4カ月で倒産した。
その後友人を通じてテラ・ルネッサンスの鬼丸昌也代表と出会い、2012年5月、同団体の外注デザイナーになった。2014年12月以降は正職員として働く。小田氏は「世界平和の実現のために、今後もアクションを起こし続けていきたい」と抱負を語る。