メキシコ、キューバ、ブラジル、ボリビア、パラグアイの中南米5カ国の国際協力機構(JICA)事務所長がこのほど、中南米の潜在力について都内の外国人記者クラブで講演した。主催はラテンアメリカ協会。中南米との経済関係の強化でキーワードとなったのは、中南米に推定200万人以上いる「日系人」と、彼らに対する「信頼」だ。
中南米は親日国が多く、世界の日系人の約60%が集中している。日本政府は、中南米との経済協力を促進するための懸け橋として日系人の存在を見直している。日本でも「ウユニ塩湖」や「チアシード」などで近年注目を集めるボリビアもそうだ。ボリビア事務所長の立原佳和氏は講演のなかで「現地での日系人に対する信頼は大きなビジネスチャンスにつながる。日系人が築いたボリビアとの信頼関係は親日感情を生んでいる。これはボリビアに限らず、中南米諸国へ経済進出を目指す日本にとって強み」と強調した。
2019年には日本人が移住して120周年を迎えるボリビア。ボリビアには「オキナワ」という地名の沖縄出身者が作った居住地(コロニア)があり、約1万人の日系人がボリビア全土に暮らす。
中南米で最大規模の日系社会を誇るブラジルでも日系人への信頼は厚い。「『ジャポネス・ガランチード』(日本人は質が保証されている)と言われるように、日系人への評価は高い」と語るのはブラジル事務所長の斉藤顕生氏だ。同国には190万人の日系人が住み、47全都道府県の県人会が存在する。
2014年に安倍晋三首相がブラジルを訪問。それ以降、医療分野での両国の連携が注目され始めた。JICAは2017年1月、日本の医療用品メーカーと日系人の医療従事者のビジネスマッチングを進めるための調査団を派遣。医療開発の課題解決を目指した日本企業との連携が進む。
ブラジルでは多くの日系人が医療の分野で働く。「ブラジル国内の医師の約4%が日系人。サンパウロ大学の医学部では日系人学生の比率が20%以上にのぼる」(ブラジル事務所長の斉藤顕生氏)という。
日本政府は2017年5月、教育や経済分野で日系社会との連携を図るための有識者懇談会を開いた。「ポスト東南アジアとしてのポテンシャル」をもつ中南米で日本のプレゼンスを高めようとする新たなアプローチだ。JICA中南米部長の竹内元氏は「確かに日本に中南米の風が吹いている。それを嵐に変えていきたい」と意気込む。