テーブルクロス(東京・四谷)の城宝薫代表は、同社の事業である、飲食店を予約するだけで途上国に給食を届けることができるグルメアプリ「テーブルクロス」の成果について大阪市で講演した。「これまでに4万食以上を届けてきた。途上国に給食を届け続けるためには、利益を生み出し続けることが何より大切だ」と語った。
テーブルクロスは「食べログ」や「ぐるなび」のような飲食店予約アプリだ。他のアプリとの違いは、消費者がテーブルクロスを利用すると社会貢献ができる点にある。テーブルクロスは、アプリに載っている飲食店に予約が入ると、1人が1回予約するたびに180円を広告費として飲食店から得る。そのうちの30円(途上国の給食約1食分)を、アジア協会アジア友の会(JAFS)など、テーブルクロスが提携する9の国際協力NGOに寄付し、途上国の子どもたちに給食として届けてもらう。
アプリを立ち上げたのは2年半前の2015年3月。2017年7月末までで累計4万2000食以上(約130万円)の給食を途上国に届けてきた。寄付に頼るのではなくビジネスにこだわる理由について城宝氏は「ボランティアや寄付では支援の継続が難しい。途上国の子どもたちのお腹を満たすことができない」と話す。こうした現状から城宝氏が強く意識するのは、利益の創造と社会貢献が一体化した「共通価値の創造(CSV)」だ。テーブルクロスの場合、グルメアプリで収益を生みながら途上国に給食を届けることを指す。
CSVは、米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が2011年に提唱した考え方。企業のサービスを利用することで、消費者も間接的に社会貢献するというのがミソだ。企業、社会問題に苦しむ人、消費者の3者が利益を得られる。城宝氏は「CSVを日本に普及させ、テーブルクロスのような一民間企業から社会を変えていきたい」と意気込む。
アプリを立ち上げた当初は、アプリに掲載してもらえる飲食店は50店舗しかなかった。1カ月で500食程度しか給食を届けられなかったという。だが2017年8月現在では、当時の約200倍である1万店舗以上に増えた。アプリをダウンロードした人も約16万人に。急成長した理由についてJAFSの職員の一人は「飲食店がテーブルクロスのビジネスモデルに共感していることが大きい」と語る。
城宝氏は高校1年生の時に障害者を支援する米国のNGOを訪問。寄付を増やすことよりも「いかに職員の賃金を払うか」という議論が多いことに衝撃を受けた。「途上国支援を継続するには利益を生み出し続けなければならない、と気付いた瞬間だった」(城宝氏)という。
今後の展開について城宝氏は「飲食店の課題解決と途上国の課題解決という『二兎』を追い続けたい」と講演を締めくくった。