世界銀行東京事務所は11月15日に、日本社会開発基金(JSDF)プロジェクトの成果を発表するセミナーを都内で開く。JSDFとは、日本政府が資金を出し、それを活用して世銀が途上国での貧困削減プロジェクトを立ち上げ、運営する基金。世銀東京事務所の開裕香子広報担当官は「JSDFプロジェクトは途上国の最貧困層に直接アプローチできる」と強みを強調する。
今回のセミナー「日本社会開発基金(JSDF)によるタジキスタン、モザンビークにおける保健・栄養分野への投資」で世銀が成功例として取り上げるのが、2013年に始まったタジキスタンの栄養プロジェクト。活動の柱は、医師と看護師を対象に、栄養改善と子どもを病気から予防する方法について研修したり、家庭菜園で栄養価が高い作物を育てるために種と肥料を提供したりすることだ。2016年11月までに研修を受けた医療従事者は1039人。うち女性は半数近い476人を占める。
セミナーで取り上げるもう1つのプロジェクトは、2012年に始まったモザンビークの首都マプトの都市衛生向上プロジェクトだ。共同トイレを作ったり、汚泥除去サービス業者に研修を提供したりするもので、2015年には1万8000人が「改善された衛生設備(トイレ)」にアクセスできるようになった。
中米ベリーズで進行中のJSDFプロジェクトに「天然資源を活用した持続可能な生計手段の強化」がある。このプロジェクトの目的は、在来種の魚を食べるゆえに生態系に影響を与える魚「ミノカサゴ(ライオンフィッシュ)」の捕獲数を増やすこと。そのために食用利用を促すのはもちろん、ミノカサゴのヒレやトゲをアクセサリーに加工し、ベリーズ国内や海外に売っている。7カ所の漁村の女性19人で構成する「ベリーズ・ライオンフィッシュ・ジュエリー・グループ」のメンバーは全員、ミノカサゴアクセサリーの加工・販売で収入を得ている。
JSDFは2000年6月、日本政府が拠出する100億円を使って創設された。プロジェクトの実施主体はNGOや支援対象地の地方自治体などだが、プロポーザル(提案書)は世銀職員であるタスクチーム・リーダーが作成する。2016年度にJSDFが資金を提供したプロジェクトは70件。直接の受益者は293万人にのぼる。分野は教育、保健衛生、環境、司法サービスなど多岐にわたるが、世銀と各国の政府が4年ごとに策定する国ごとの戦略に沿った分野が優先される。