国際協力NGOの日本国際ボランティアセンター(JVC)はこのほど、南スーダン現地出張報告会「報道されなくなった南スーダンの今~住む土地を奪われた人々~」を都内で開催した。日本人スタッフが南スーダンで活動する唯一の日本のNGOであるJVCは2016年9月から、緊急支援として南スーダンの国内避難民キャンプで食料や生活用品を配ってきた。しかしJVCの今井高樹氏(人道支援/平和構築グループマネージャー・南スーダン事業担当)は「食料は食べれば終わり。キャンプの人たちが自力で食べていける方法を考える必要がある」と指摘する。今井氏が現在力を入れるのは、女性の生計向上支援と子どもの就学支援だ。
今井氏は2017年11~12月、南スーダンの首都ジュバの郊外にあるマンガテン国内避難民キャンプを訪れた。このキャンプは南スーダン政府が運営するもので、約600世帯(3000人)が暮らす。そのほとんどが女性と子どもだ。
今井氏がキャンプの女性たちに、食料をどう手に入れるのかを聞いたところ、国連やNGOの支援と、国内外に住む親せきからの送金に頼っているとの答えが多かった。食料が不足すると、別のキャンプに食料をもらいに行くこともあるという。
子どもたちも食料を得るのに苦労している。学校に行かず、建築廃材の薪や竹を拾って1束10スーダンポンド(約6円)で売る子もいる。ちなみにカップ1杯のトウモロコシ粉(南スーダンの主食)の値段は約50スーダンポンド(約30円)だ。
外からの支援に頼るのではなく、小さなビジネスを自分で立ち上げ、生計を立てる女性も少なくない。ロイスさんは、キャンプにある市場で買い出しをし、それを小分けにして近所で売る。「誰かが助けに来るのを待っているだけの生活なんてしたくない。自分たちで少しでも何とかしたい」と言う。
トウモロコシやサツマイモ、キャッサバを仕入れ、茹でて市場で売るのはグレースさん。商売上手な女性としてキャンプ内でも有名だ。このほか、トウモロコシやオクラなどの野菜をキャンプ内の空き地で育てる女性、クッキーを焼く女性、お茶やコーヒーを露店で売る女性、石けんのかけらを集めて加熱して石けんをリメイクする女性――。キャンプの女性たちが売る商品は、キャンプの人だけでなく、近所の住民も買いに来る。
「ビジネスをしていない女性たちも、何かを始めたいと思っている。だがどうしたらいいのかわからない。ほんの少しの元手がないという人も多い」(今井氏)。ビジネスをすでに始めた女性たちも、農具、クッキーの型、鍋などを他人から借りていることが多く、自分の道具があればもっと収入を上げられる。
JVCは、こうした女性への支援を強化していく予定だ。やり方は、キャンプの女性たちとまず話し合う。次に、すでにビジネスをしている女性たちと経験を共有する。その後で、クッキーづくりなどの簡単な研修や、農具、クッキーの型などの道具を提供する計画だ。
南スーダンでは2017年12月21日に、紛争中だった10以上のグループが停戦に合意した。しかし国内外に逃れた人の多くは、停戦を信用せずに様子を見ていて、家に帰ろうという動きはあまりない。国内避難民の数は現在190万人、国外に出た難民は210万人にのぼる。南スーダンの総人口は約1200万人だから、国民の3分の1が避難生活を強いられている計算になる。
日本の外務省はジュバに対して渡航中止勧告、ジュバ以外の地域に対しても退避勧告を出している。そのため日本政府の助成金を得て活動するNGOは、日本人スタッフを南スーダンに派遣できない。JVCは南スーダンでは個人の寄付金で活動している。このため日本人スタッフを現地に派遣できる唯一の日本のNGOだ。今井氏はこの3月に再度現地を訪問する予定。