はがき・本を集めて年間6400万円調達! NGOシャプラニールのファンドレイジング戦略

シャプラニールのフェアトレード商品を背に立つ国内活動グループ(渉外/ステナイ生活担当)の上嶋佑紀氏。趣味はMMA(総合格闘技)。ネパールに出張した時もトレーニングのために毎日走っていたという

国際協力NGOシャプラニール=市民による海外協力の会は、収入の約25%を「ステナイ生活」プログラムで調達する。ステナイ生活とは、個人や企業、団体、学校から不要品を寄付してもらうプログラム。2017年度の「ステナイ生活」の収入は約6400万円となる見込みだ。シャプラニール国内活動グループ(渉外/ステナイ生活担当)の上嶋佑紀氏は「(ステナイ生活は)シャプラニールの活動を知らない人でも、国際協力の入り口として気軽に始められる」と説明する。

■「捨てるのはもったいなかった」

ステナイ生活で集めるのは、書き損じハガキ、切手、本、CD、使用済みトナー/インクカートリッジ、貴金属など。年初は書き損じ・未使用の年賀状が多く、年賀状の時期だけで毎年20万枚以上の寄付がある。「ハガキ1枚だけでも、私たちの呼びかけに応えて、手間をかけて送っていただけるのはとても嬉しい」と上嶋氏は言う。

不要品の寄付は年々増えている。「亡くなった親の遺品の切手コレクションやアクセサリーを寄付する人も多い。『捨てるのはもったいなかった。役に立てられて良かった』という手紙が入っていることもある」(上嶋氏)

集まったハガキや切手は、シャプラニールからの郵送にそのまま使ったり、郵便局で新品に交換した後で換金したりする。それ以外の物品はリサイクル業者に買い取ってもらう。かつてリサイクル会社に勤めた経験をもつ上嶋氏は「せっかくいただいた物品寄付だから、できるだけ高く売れる方法やタイミングで売却するよう努力している」と語る。高く売れそうなものはネットオークションに出品する場合もある。

110人のボランティアが仕分け作業

大量に送られてくる物品の開封、分類作業にはボランティアの力が欠かせない。シャプラニールの事務所には毎日平均約10人のボランティアが集まる。ボランティアを10年以上続けているベテランもいれば、最近始めたばかりの人もいる。切手に詳しいボランティアが、高く売れる切手を見つけてくれることもある。

中学校のボランティア部の生徒たちや、大学の単位取得のために参加する学生もいる。「最初は単位目的でも、ボランティアをきっかけに(シャプラニールの活動地域である)バングラデシュやネパールに興味をもってくれる学生も多い」と上嶋氏は言う。

上嶋氏は2018年2月に、NGOの活動を支援する団体アーユスから「アーユスNGO新人賞」を受賞した。シャプラニールに入って5年目、ステナイ生活をはじめとするファンドレイジング(資金調達)活動の実績が、シャプラニールだけでなくNGO業界全体に有益と認められたためだ。

NGOにとって資金調達は命

ステナイ生活の収益は、特定のプロジェクトではなく、シャプラニールの活動全体に使われる。シャプラニールは、子どもの権利と防災、フェアトレードに主眼を置き、主にバングラデシュとネパールで活動する。バングラデシュでは、他人の家で使用人として働くゆえに学校に通えない女の子を支援するセンターを運営。女の子たちに勉強を教えたり、職業訓練をしたりすることで、子どもたちの将来の選択肢を広げようとしている。

保護者や雇い主に対しては、家庭訪問や支援センターのワークショップやイベントを通して、女の子たちを学校に通わせるように働きかける。地域住民や行政を巻き込み、使用人として働く女の子たちの権利を守る政策の法案化を促すなど、社会全体を変えていくための働きかけもする。

NGOの活動といえば、海外での直接的な支援が注目されがちだが、国内での資金調達や広報活動も重要。海外活動と国内活動の両輪があってはじめて活動がうまく回る。上嶋氏が率いるチームは現在、4月から活動するインターンを募集しているところだ。このインターンシップでは、ファンドレイジングや企業に対する広報活動、フェアトレード製品の販売会、カレーや刺しゅうのワークショップなどの活動にかかわることができるという。

シャプラニールがバングラデシュで運営する支援センターで勉強する少女(上嶋氏撮影)。グローバルフェスタJAPAN2017のNGO部門で最優秀賞を受賞した

シャプラニールがバングラデシュで運営する支援センターで勉強する少女(上嶋氏撮影)。グローバルフェスタJAPAN2017のNGO部門で最優秀賞を受賞した