チョウセンアサガオを手に取り説明するエンベラ・チャミ族のシャーマン(ハイバナ)、フロレンティーノ・タマニス・タスコンさん(コロンビア・メデジン郊外の先住民保護区で撮影)
ただ驚くべきは、チョウセンアサガオはエスコポロミナになる前の植物の状態でも危険なこと。「 葉っぱは毒性をもつ。噛むと幻覚が起きる。でも満腹感を維持するためコカの葉っぱを噛む習慣をもつエンベラ・チャミ族は時々、チョウセンアサガオの葉っぱを誤って食べてしまう。食べた後に狂った挙句、川に身を投じ、溺死した人も今までに何人かいる」とタスコンさんは説明する。
チョウセンアサガオが麻薬になることやその製法をシャーマンが明かしても罰はない。だがタスコンさんは言う。「カルマタ・ルアを守るためにこの秘密は誰にも明かさない。チョウセンアサガオが麻薬になると教えてしまえば、きっとエンベラ・チャミの若者たちは使い始めるだろう。そうすれば瞬く間に商売となり、コカイン同様、エスコポラミナの世界市場ができあがってしまう」
だが秘密であるがゆえにチョウセンアサガオが麻薬として広まることもある。エスコポラミナの原料と入手場所を知っているメデジンやボゴタなどの都市の人たちは時々、チョウセンアサガオを買いにカルマタ・ルアまでやって来る。麻薬として使われることを知らないエンベラ・チャミの人たちは、自生するチョウセンアサガオの木を売ってしまうという。
ハイバナだけが所有できる聖なるチョウセンアサガオの木。エンベラ・チャミ族にとっては薬になる貴重な財産。「ハイバナは先祖代々、チョウセンアサガオの木を大切に育ててきた。私も死ぬ前に次の世代に渡すのが楽しみだ」とタスコンさんは木を撫でながら微笑む。
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