国際協力NGOミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)は、マラウイ駐在員一時帰国報告会「バオバブでマラウイの農村を活性化させよう!」を都内で開催した。MPJは2017年2月から3年計画で、バオバブ製品の製造販売を通した、農民グループの自立支援プロジェクトを実施中。報告会に登壇したMPJマラウイ駐在員の青木道裕氏は「マラウイの人たちは、バオバブが身近にありすぎて、その価値に気づいていなかった」と話す。
■パウダーにすると値段は4倍
MPJが支援するのは、マラウイ中部のミトゥンドゥとドーワ、同南部のブランタイヤとマンゴチの4地域にある5つの農民グループ。総勢1000人だ。いずれのグループも、日本の「一村一品運動」を習って、地域性を生かした特産物を作って売る。はちみつ、ハイビスカスティー、バナナワイン、陶器など商品ラインナップはさまざま。「すべてのグループが共通で直面していた問題は、販売先を確保できなかったこと。地域にあるものを活用することが先にあって、市場のニーズに対する意識が低かった」と青木氏は言う。
マラウイの「一村一品運動」は、2003年に来日したバキリ・ムルジ大統領(当時)の要請で始まった。国際協力機構(JICA)が現地で支援した農民プロジェクトはすでに100以上にのぼる。
「一村一品運動」で作られる商品の中でMPJが注目したのが、マラウイ各地に自生するバオバブを使った製品だ。バオバブの果実を砕いたパウダーはビタミン、ミネラル、ポリフェノールが豊富な健康食品として、バオバブの種を絞ったオイルは優れた化粧品として欧米で人気が高い。日本やマラウイ国内でも市場は徐々に広がっている。
バオバブをパウダー化すると付加価値が上がり、値段は約4倍になる。マラウイのバオバブは、共有地や森に自生しているものであれば、誰でも実をとることが可能だ。ただ実は高いところに成るので、木に登るか長い棒でつついて落とすと危険が伴う。このため、できるだけ自然に落ちてきたものを使うように農民に話している。
現地でバオバブの実をそのまま売ろうとすると、バケツ1杯(約5キログラム)で200円ぐらい。そこから約1キログラムのパウダーができる。180グラム入りの瓶に小分けすると、首都リロングウェでは1瓶150円ぐらいで売れるので、全部で約800円になる。さらに、パウダーの製造で残った種もオイルを製造するグループに原料として販売できるので、無駄なく利益を出せるという。
■原価計算できなかった
このバオバブ・プロジェクトをMPJは、外務省NGO連携無償資金協力(政府開発援助=ODAの一種)の資金で実施している。プロジェクトでは、農民グループがバオバブ製品を作って売ることで、収入アップできるように手助けする。まずは搾油機などの設備を提供し、バオバブパウダー、バオバブオイルの作り方と、設備のメンテナンス方法の研修を行った。
製品を作るだけでなく、原価計算や年間事業計画の作成などのビジネス研修も重要だ。「今までは、グループビジネスをしていても、経費や売り上げの記録があいまいで、利益が出ているかどうか正確にわからないグループもあった」と青木氏は言う。
バオバブ製品はまだ試験製造のみで利益は出ていない。だが研修を受けた農民の中には、個人でハチミツを売り、原価計算して利益を出し、自転車を買った人もいるという。そうした成功例が仲間の間で励みになりつつある。
ビジネス研修では、グループ内の教育レベルの差が大きな課題だ。中には、電卓の使い方を知らない人や、読み書きができない人もいる。そこで、青木氏のチームが工夫したのは、最初にできる人に重点的に教えて、その人にグループ内で指導してもらうことだ。「グループのみんなが利益を得られるように、全体を底上げしたい」と青木氏は強調する。
プロジェクトの今後の目標は、バオバブ製品の知名度向上だ。リロングウェで月に1回開かれるファーマーズマーケットや、日本大使館のパーティーなどで、日本では都内で10月に開かれるグローバルフェスタや大学祭などで、バオバブ製品を売ったり、サンプルを配ったりと活動を進めている。今後はさらに活動を拡大していく。「欧米だけでなく、日本やマラウイ国内でもバオバブ製品の市場をもっと広げたい」と青木氏は話す。