ベナンの田舎の小学校が卒業試験で合格率80%! 成功の秘訣は保護者会が独自に教師を雇ったこと

ヘカメ小学校で教師を務めるベフェ・セージさん(前列中央)と子どもたち。ヘカメ小学校の校舎は日本の援助で建てられた。教室は8つある。電気は通っていない(ベナン・アトランティック県)

西アフリカ・ベナンの最大都市コトヌーから車で1時間半。生い茂る森のなかに「ヘカメ小学校」はある。ヘカメ小学校は、ベナン政府が実施する小学校の卒業試験で合格率が80%。これは、同校があるアトランティック県でトップの成績だ。ヘカメ小学校の躍進を支えるのは、教師を独自に雇うなど教育に熱心な保護者会と、毎日の習熟度確認テストで児童に基礎学力をつけさせる教師たちだ。

ヘカメ小学校の教師は全部で6人。4人はベナン政府に雇われた公務員で、2人は保護者会が独自に賃金を払う。保護者会が雇う教師の月収は2万5000セーファーフラン(CFA、約5000円)。この金額は、ベナンの1カ月当たりの最低賃金4万CFA(約8000円)を下回る。ちなみにヘカメ小学校に通う児童の親は必ず、保護者会の会費として1カ月300CFA(約60円)を払わなければならず、給料はそこから捻出する。

ヘカメ小学校で教鞭をとるベフェ・セージさん(29)は、保護者会に雇われた教師のひとりだ。「私はヘカメ村の出身。この小学校に通う子どもは家族みたいなもの。小学校の卒業試験に合格できずに、留年または中退する児童をひとりでも減らしたい。そのために低い給料でも誇りをもって教師という仕事を続けている」と胸を張る。

ヘカメ小学校の児童数は300人以上。教師が6人なので、1クラス当たりの児童数は約50人だ。だが仮に政府から派遣された教師4人だけで回していたら1クラスの児童数は約75人。1クラス25人の差は、子どもたちの学びを考えると決して小さくない。教師の数を増やす意義はここにある。

ヘカメ小学校で頑張っているのは保護者会だけではない。教師らも汗を流す。ヘカメ小学校では、毎日2回の習熟度確認テストと、3カ月ごとの定期試験がある。児童の学習の進ちょく状況を測るのがねらいだ。

セージさんは「児童50人以上のテストの採点と試験の準備は、毎日あるから大変。仕事を家に持ち帰ることもある」と苦労を打ち明ける。だがその努力もあって、子どもたちの学力は着実に上がっている。子どもたちが勉強へのモチベーションを維持できるよう、セージさんは、テストで良い点をとった子どもに本や計算機をプレゼントするという。

授業がない週末は、希望する児童に対して個別指導をする。料金は高くて1カ月5000CFA(約1000円)。経済的に厳しい家庭の子どもは金額を下げる。セージさんが個別指導をする児童は現在11人。「家が近い子どもたちを3~4人のグループにまとめて、1日3~4件の家を回る」。セージさんにとって個別指導は副収入を得る機会にもなっている。これがなければ生活は成り立たない。

また保護者会の活動は教師を雇うだけではない。学校のグラウンドを整備したり、校内をそうじしたりもする。「体育の卒業試験をする際に、グラウンドが草ぼうぼうだったため、試験ができなかった。だから保護者会に助けを求めて、グラウンドの草刈りを手伝ってもらった」(セージさん)

ベナンの小学校は6年制。学費は無料。授業はすべてフランス語を使う。主な科目は、フランス語、算数、理科、社会、体育、図工、音楽など。卒業試験の合格率はそれぞれの小学校の評価に直結し、試験の結果が悪いと校長が交代させるケースも少なくないという。

ヘカメ小学校の教室の中。ストライキがあったため、児童の数はいつもより少ない(ベナン・アトランティック県)

ヘカメ小学校の教室の中。ストライキがあったため、児童の数はいつもより少ない(ベナン・アトランティック県)