写真の右端がアナセリ・ヒメネスさん(コロンビア・メデジンの「コムナ13」で撮影)。中央はコロンビア人通訳のアレハンドロさん
政府からの補助はゼロ
3つめの見えない暴力は、NGOが国内避難民を支援するうえで必要な資金をコロンビア政府が補助してくれないことだ。ヒメネスさんのような国内避難民の自立を助けるために、メデジンで2013年に立ち上がったNGOが「COAPAZ」。この団体は、スペイン語の読み書きを教えたり、家を提供したりする。国内避難民が自宅の裏庭でアボカドなどを栽培し、販売する「C.A.P.プロジェクト」も始動しつつある。
COAPAZの代表を務めるサンドラ・プエルタさん(41)は「読み書きや住居の提供は支援の第一段階にすぎない。将来的には国内避難民が仕事に就き、その仕事を安定化させることが重要」と語る。
ただC.A.P.プロジェクトを軌道に乗せるには少なくとも3000万~5000万ペソ(約110万~180万円)が必要だ。COAPAZのスタッフや調査員はボランティア。行政に補助金を申請するためには、必要な予算の少なくとも1割(C.A.P.プロジェクトの場合300万ペソ=約11万円)を元手として示さなければならない。「国内避難民につきっきりで世話をするため、仕事を辞めざるをえなかった」とサンドラさん。C.A.P.プロジェクトに必要な資金はいまだ調達できず、プロジェクトも思うように進まない。
サンドラさんは「(和平合意による)サントス大統領のノーベル賞受賞は評価しない。サントス大統領はノーベル平和賞の賞金をコロンビア国民のために使うと言っているが、実際には末端まで還元されていない。賞金(約1億300万円)の1%でももらえれば、プロジェクトを遂行できるのに」と力なく笑った。
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