軍隊をなくしたら強くなった! 映画「コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~」が大人気

中米コスタリカの憲法には、日本の憲法9条と同じく軍隊不保持の条文がある。コスタリカは1948年に軍事費をゼロにして以来、教育や医療など社会福祉を充実させ、国民の幸福を追求してきた。そんなコスタリカの平和国家への歩みを追ったドキュメンタリー映画「コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~」(2016年製作)の自主上映会が全国各地で人気を博している。

映画は、コスタリカの根幹を揺るがした1948年の内戦から1949年にかけての軍隊撤廃、その後の平和国家への道筋をたどる。コスタリカは軍隊をなくした後も、隣国ニカラグアの政情不安や米国の圧力により何度も戦争の危機にさらされる。だが条約や国際法、国際機関との関係強化を盾に平和を維持してきた。また軍隊の撤廃で浮いた予算を社会福祉に充てることで、教育や医療の無償化を実現。高い識字率(96%、2013年UNESCO=国連教育科学文化機関)や平均寿命(79.61歳、2015年世界銀行)を誇り、2016年には「地球幸福度指数(HPI)」で140カ国中1位に輝いた。

映画ではこうした平和国家への歩みを著名人や学者、ジャーナリストらが明らかにする。1948年12月1日に「兵士よりも多くの教師を」というスローガンを打ち出して軍隊撤廃を宣言したホセ・フィゲーレス・フェレール元大統領(1948~49年、1953~58年、1970~74年)や、中米諸国の和平合意を成立させてノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス・サンチェス元大統領(1986~90年、2006~10年)などが登場する。アリアス元大統領は「軍を放棄することによって、弱くなったのではなく、強くなることができた」と説く。

4月27日に都内で開かれた「映画『コスタリカの奇跡』上映&監督来日シンポジウム」(主催:ユナイテッドピープル、共催:ハリウッド化粧品)には、この作品を撮ったマシュー・エディー、マイケル・ドレリング両監督らが登壇。ドレリング監督は「資源や軍備がない国でも平和に暮らしていけることをコスタリカは示した。国際平和システムを構築し、どう生かしていくかは私たちにかかっている」と訴えた。

コスタリカに今の日本が学ぶことは多い、と話すのは、シンポジウムに登壇した「コスタリカ平和の会」共同代表で国際ジャーナリストの伊藤千尋さんだ。10回以上に及ぶコスタリカ取材のエピソードをこんなふうに紹介した。

「コスタリカには平和憲法があるけれど、もし侵略されたらどうするの?」。道でたまたま会った女子高生に伊藤さんが尋ねたところ、女子高生は「コスタリカを攻めるような国があれば世界が放っておかない。私はこのコスタリカが平和のためにやってきた努力を誇りに思っている」と胸を張って答えたという。

コスタリカでは市民にも平和憲法の意義が浸透している。伊藤さんは「コスタリカのように平和憲法を生かす社会にするために、日本の市民もいま立ち上がるべき」と訴える。

コスタリカの奇跡は、ユナイテッドピープルがこれまでに配給した映画の中で最も人気の高い作品だ。同社の関根健次社長によると、2017年6月の公開以来、口コミで評判が広まり、当初は予定していなかった映画館での公開やアンコール上映が決まったという。

映画を通して伝えたいこととして関根さんは「コスタリカは中米のあまり知られていない国。だけど21世紀のモデル国家になっている。コスタリカに限らず、世界に目を広げるとたくさんのアイデアがある。この映画を、一人ひとりが日本の未来に前向きなビジョンを描いて、みんなでより良い未来をつくっていくきっかけにしたい」と語る。

コスタリカの奇跡を上映する映画館は、大阪・シアターセブン(5月15日、17日、20~21日、23~25日、28~31日、6月1日)、神奈川・横浜シネマリン(6月2~6月8日)、愛知・名古屋シネマテーク(6月9~6月15日)など。6月1日にはDVDも発売される予定だ。

ドキュメンタリー映画「コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~」のポスター

ドキュメンタリー映画「コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~」のポスター