アフリカの食料難を「イモ」が救う、ヤムイモを食べる唯一の先進国・日本の専門家が指摘

西アフリカの国ベナンのレストランの食卓。左奥にある白い餅のような食べ物がフフ(ベナンでは、ヤムイモから作ったものを「アグー」と呼ぶ)。中央に並ぶ魚や肉、スープと一緒に食べる(ベナン・コトヌーで撮影)

イモの葉は栄養豊富

イモ類、特にキャッサバは昔、「貧しい人の食べ物」と揶揄されてきた。イモの栄養価の低さも問題だった。ただアフリカではイモの部分だけでなく、葉も野菜として食べる。キャッサバの葉はビタミンやカルシウム、鉄などのミネラルを多く含むため、栄養価は高い。

イモの葉だけでなく、アフリカにはモロヘイヤ、オクラなどのアフリカ原産の野菜もある。「アフリカの人に、ビタミンAを摂るため、ホウレンソウの作り方を教えるのは意味がない。キャベツ、レタスも換金作物としてなら良いが、自分たちが食べるものとしては無理に普及させる必要はない」と志和地教授は言い切る。

ボルトの速さの秘密はヤムイモ!?

ヤムイモは、アジア、アフリカの多くの国で、滋養強壮に効くという伝承がある。志和地教授らのグループの研究によると、ナイジェリアのヤムイモである「イエローギニアヤム」のアロ品種には、ディオスゲニンという成分が多い。必須アミノ酸も18種類含んでいることが分かった。ディオスゲニンは疲労を回復させるほか、筋肉損傷を抑えたり、ホルモンバランスを整えたり、老化を防いだりといった効果があるとされる。

「陸上のウサイン・ボルト選手が、子どものころから主食にしていたというジャマイカのヤムイモも同じように分析した。こちらにもディオスゲニンが多く含まれていた」(志和地教授)

日本では、バイオテクノロジー企業のタカラバイオが沖縄のヤムイモの一種「トゲドコロ」にヤムスゲニン(R)(ジオスゲニン配糖体)という疲労回復成分が含まれていることを発見。サプリメントを商品化した。

ヤムイモといっても、品種によって成分はさまざま。志和地教授は「イモの成分と効能の研究が進めば、アフリカ産のヤムイモをサプリメントや介護食として、ビジネス用途で使えるようになるのではないか」と期待する。

ヤムイモをついて「餅」のようにしているところ(ベナン・コトヌーで撮影)

ヤムイモをついて「餅」のようにしているところ(ベナン・コトヌーで撮影)

アフリカ理解プロジェクト主催のイベント「アフリカのイモ食文化-美味しさの秘密-」で話す東京農業大学の志和地弘信教授(写真はアフリカ理解プロジェクト提供)

アフリカ理解プロジェクト主催のイベント「アフリカのイモ食文化-美味しさの秘密-」で話す東京農業大学の志和地弘信教授(写真はアフリカ理解プロジェクト提供)

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