3つの環境NGO(FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター、気候ネットワーク)が主催する勉強会「石炭火力推進で孤立する日本―インドネシア現地報告から考える―」がこのほど、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。インドネシア最大の環境団体WALHIスタッフと現地での訴訟を担当する弁護士らが来日。日本が官民で進めるインドネシア・チレボン石炭火力発電所2号機建設プロジェクトへの融資をやめるよう訴えた。すでに稼働中の1号機の周りの海では、漁獲量が減ったり、呼吸器系の病気が増えたりしているという。地球温暖化を助長する企業からのダイベストメント(投資撤退)が欧米などで進む中、融資し続ける日本に国際的な批判が集まっている。
日本の税金を財源とする国際協力銀行(JBIC)はかねて、インドネシア・ジャワ島にあるチレボン石炭火力発電所の建設プロジェクトに数百億円を貸し付けてきた。2010年に1号機へ2億1400万ドル(約240億円)、2017年4月には2号機へ7億3000万ドル(約810億円)の融資を決め、その一部を実行した。これとは別に民間では三菱UFJ、みずほ、三井住友の3行も融資する方向だ。
2012年に1号機が稼働して以来、その周りでは漁業・農業、健康への被害が甚大だ。WALHI西ジャワ支部のメイキ・パエンドンさんは「(禁漁区域が設けられたことで)漁場が狭くなった。また発電所から出る温度の高い排水の影響もあって、貝・魚・小エビの漁獲量が半分に減った。塩田は、発電所からのばい煙で黒く汚された」と窮状を訴える。地元の保健センターによると、チレボン石炭火力発電所の硫黄酸化物(SOx)排出基準濃度は、日本の20倍以上。このせいで呼吸器系の病気をわずらう子どもが増えているという。
2号機の建設用地として土地が収用された影響も深刻だ。「農地を失った農民の生活は苦しくなった」(メイキ・パエンドンさん)
業を煮やした住民らが対抗手段としたのが、西ジャワ州政府に対する行政訴訟だ。住民らは2016年、2号機の環境許認可の無効を訴えてバンドン行政裁判所に提訴。翌年勝訴し、環境許認可の無効は確定した。ところが州政府は、別の環境許認可を新たに出し、現在も係争中だ。この間にも、2号機の土地造成作業が続けられている。
WALHIとFoE Japanはかねて、チレボン石炭火力発電所に反対する住民運動をサポートしてきた。両団体を含む171団体(40カ国)は5月18日、係争中の2号機に公的資金(日本の税金)を融資したJBICと日本政府に、やめることを求める「国際要請書」を提出。法令順守と環境社会配慮を行うと定めた「JBICガイドライン」に違反していると抗議した。
地元民や国内外のNGOが強く抗議するチレボン石炭火力発電所へ融資する姿勢を崩さないJBIC(日本政府)と日本のメガバンクに対し、世界から批判の目が集まっている。2017年11月、ドイツ・ボンで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)では、石炭火力発電所への批判が一層強くなった。「脱石炭加速アライアンス」に参加する国と自治体の数は36を数える。欧州の銀行、保険会社、年金は相次いで、石炭関連企業からのダイベストメントを始めた。日本の電力会社や商社も対象になっているという。