元ストリートチルドレンが海外留学! カンボジアの支援団体グローバルチャイルドがこだわる「週330円の貯金」

グローバルチャイルドの英語教師ソベンさん。「生徒たちは入学したときとは見違えるほど立派になって卒業していく。それを見れる私は本当に幸せ者」と笑顔がこぼれる(カンボジア・シェムリアップ)

カンボジアのシェムリアップには、ストリートチルドレンが貧困から抜け出せるように、カンボジア政府認可の学校(小学校から高校まで)と寮を経営するNGOがある。グローバルチャイルドだ。米国人のジュディー・ウィーラー氏らが2003年に設立したもので、教育方針のこだわりは、グローバル時代に不可欠な英語を習得させることと、お金の管理などの生活スキルを身に付けさせること。すべての子どもに銀行口座を作って貯金させ、貯まったお金は、子どもたちが将来、大学の学費にあてたり、通学するためのバイクを買ったりと自分への投資に使う。

グローバルチャイルドで英語教師として働くカンボジア人のソベンさん(32)は「うちの生徒の大半の家庭は、その子の収入に頼って生活していた」と入学前の状況を語る。ストリートチルドレンの親は十分な教育を受けていないため、就ける仕事も皿洗いやホテルの掃除係などに限られているからだ。親の少ない収入を補てんしなければならず、子どもが生活費を稼ぐ。

こうした負の連鎖を断ち切ることを目的にグローバルチャイルドは、子どもが勉強に専念しても、家族が生活できるよう1人の生徒につき1週間に6ドル(約660円)を援助金として支給する。だが援助金6ドルのうち、生活費として生徒やその家族が使えるのは3ドル(約330円)までというのが決まりだ。あとの半分は、同団体が作った生徒の銀行口座に貯金しなければならない。高校3年生にもなれば貯金額は500ドル(約5万5000円)前後になる。生徒たちはこのお金で通学のためのバイクを買ったり、大学に進学するための学費、タイなどに留学する際の費用に充てたりする。

貯蓄用のお金は、生徒もその家族も引き出せない。家族が事故にあったり、病気になったりといった緊急事態は例外だが、その際もグローバルチャイルドに申請し、職員の許可を得る必要がある。理由は、家族がギャンブルなどで浪費しないようにするためだ。「この貯金は生徒の教育資金。だから家族は使えない。生徒の親が商売を始める際の資金として使うことは可能だが、その場合でも『生徒から借りる』形をとる」(ソベンさん)

グローバルチャイルドが援助金の管理を徹底し、生徒の教育に投資するように促すのは、教育こそが貧困脱出への一番の近道だと考えているからだ。この貯金を使って実際に、シェムリアップの私立大学パナストラ大学や東南アジアの他の大学へ進学したり、海外留学を叶えたりした生徒もいる。グローバルチャイルドに通う生徒のひとりは「将来は会計士になりたい。頑張って勉強して大学の奨学金をとるんだ」と笑顔で話す。