募金1100万円で東ティモールに給水システムを作った! 「名水のまち」福井県大野市の驚異の草の根パワー

49万5040円の募金を集めた2016年「越前大野名水マラソン」の様子

草の根レベルで、アジアで安全な水へのアクセスが最も悪い国・東ティモールに安全な水を届けるプロジェクトがある。「名水のまち」として有名な福井県大野市が進めるものだ。地元の企業・団体から集めた約1100万円(3年間)を使って、東ティモールに2基の給水システムを2017年に建設。これにより約600人の村人が安全な水を手に入れられるようになった。

「水に恵まれない地域への支援は水への恩返しになる」(大野市役所の職員)。こう考える大野市が出合ったのは、東ティモールの人たちに清潔な水を供給するシステムを作る国連児童基金(UNICEF)のプログラムだ。このプログラムの一環として、大野市は16年から、市内の企業や団体を対象に、東ティモールに給水システムを建設する資金を募る活動を開始。当初は10にも満たなかった賛同企業・団体は現在では100を超えるようになった。

募金を集めるためのユニークな取り組みに、毎年5月に大野市で開催される「越前大野名水マラソン」を通じた寄付がある。このマラソンでは、大会実行員会が参加したランナーが1キロメートル走るごとに10円を寄付する。16年は49万5040円を集めた。

東ティモールのプロジェクトで大野市は17年の夏には、募金額約1100万円の一部を使って、東ティモールのウラホー村とムロ村に給水システムを1基ずつ設置した。これによりあわせて671人(117世帯)の村人がきれいな水をすぐに利用できるようになったという。

大野市は18年度も2基の給水システムを募金によって設置する予定だ。19年までに合計6基の設置を目指す。

02年にインドネシアから独立した東ティモールは、数十年に及ぶ独立戦争で国内の水道インフラのほとんどが壊されてしまった。給水システムの設置で、料理などに使う水もきれいになり、下痢などの体調不良を起こすことは少なくなったという。

大野市が進める給水システムの設置は、単なる安全な水の確保にとどまらない。付随するメリットのひとつは、山奥にある水源まで子どもたちが水くみに行かなくてもよくなることだ。水くみの作業から解放されることで、子どもたちは学校に通える。

大野市が採用する給水システムは、山奥の水源から住民たちの暮らす地域までパイプをつなぎ、自然の力を利用して水を供給する「重力式」と呼ばれるもの。水源の近くに浄水装置を置くことで、水の質を良くする。