インド中西部の都市プネーのスラムでトイレを作り、貧困層の衛生環境を向上させるNGOがある。「MASHAL」(マシャール)だ。同団体とプネー市公社(PMC)が共同でトイレ設置を進めるスラムでは、各家庭のトイレ普及率は驚異の70%にも上る。MASHALはまた、スラムの子どもたちが通う学校にもトイレを設置し、児童・生徒が安心して勉強できる環境を整えてきた。
トイレ設置プロジェクトのコーディネーターのひとりがビシュヌさん(28)だ。ビシュヌさんは、プネー市東部のハダップザー地区にある6つのスラムを担当する。このエリアには約5000人が暮らす。そこでビシュヌさんは各家庭にトイレを設置したり、シングルマザーの収入向上を支援したりしてきた。
「スラムの住民は以前、共同トイレを使っていた。でも共同トイレは長い列ができて待たなければいけないし、清潔でもない。家庭用トイレをもちたいと思う人が増えてきたんだ」とビシュヌさんは語る。彼の担当地域では家庭用トイレの普及率は約70%と、スラムとしてはかなり高い。屋外で用を足す人はほとんどいなくなったという。
MASHALは2年前から、スラム周辺の公立学校でもトイレの建設を進めている。すでに7校にトイレを作った。ビシュヌさんは「公立の学校に通う女の子の多くが途中でドロップアウト(中退)してしまう。その大きな要因はトイレがないこと」と説明する。女の子は12歳ごろから、異性と同じ場所、しかも屋外で用を足すことに大きな抵抗を感じ始める。
「私立の学校は設備も良い。だけどスラムの子どもは通えない。きれいなトイレを設置することで、女の子が安心して教育を受けられるようにしているんだ」(ビシュヌさん)
インドのトイレ普及率は、実は2014年にモディ氏が首相に就任した後、劇的に改善している。政府の最新データによれば、トイレ普及率は14年の38.7%から18年は89.5%へと2倍以上になった。ただ、この普及率はスラムの公衆トイレも含む可能性があるため、各家庭に1つのトイレがあるとは言い切れない。
これは、モディ首相が国をあげて多額の予算を投じ、トイレ設置計画「Swachh Bharat Mission(クリーンインディアミッション)」を推し進めてきたからだ。建国の父ガンジーの生誕150周年を迎える2019年までに100%のトイレ普及率を目指す。