勉強第一! カンボジアでは大学生になるまで恋愛は親にヒミツ

カンボジア・シェムリアップのプサ・ルー(ルー市場)にあるアクセサリー売り場。オシャレなネックレスなどが並ぶ

日本で増えている、学生カップルのペアルック。カンボジアでは、家族や周りの人に恋人の存在がバレるペアルックはご法度だ。親は、子どもに将来良い職業に就いてほしいため、大学に入るまでは勉強に専念してほしいと強く願う。その一方で、親に隠れてこっそり恋愛をする女子高生もいるようだ。

■テストの点が下がっちゃう

「日本は自由だと思う。(アンコールワットの拠点となる街)シェムリアップでは恋人がいたら、親が許さないから秘密にする」。シェムリアップの女子高生はこう語る。大学に進学する前に恋愛するかどうかは人それぞれだが、恋人がいることを親に内緒にするのは当たり前のようだ。

カンボジアの親のほとんどは、娘に対して、しっかり勉強をして将来成功できるようにと大きな期待をかける。国連教育科学文化機関(UNESCO)の統計によると、カンボジアの大学進学率は13.14%と日本のおよそ4分の1。それだけに大卒の価値は高い。

だが大学に行くにはたくさん勉強する必要がある。進学を目指す高校生の多くは、授業の内容を理解するために、基本的に同じ学校の先生が教える追加講義(エキストラクラス)に参加する。シェムリアップの公立高校の大半は、校舎数・教師数の不足から、二部制(午前7時~正午のクラスと正午~午後5時のクラスに分かれる)をとるため、1クラスに60人の生徒がいることもざら。生徒ひとりひとりにあわせたサポートは難しいのが実情だ。

ただエキストラクラスは無料ではない。1教科あたり1カ月6ドル(約670円)払う必要がある(成績優秀者などは無料になるケースも)。エキストラクラスを受ける女子高生らは「6ドルは高い。6教科(クメール語、数学、化学、物理、生物、英語)受けたら36ドル(約4000円)にもなる」と話す。カンボジアの1カ月あたりの最低賃金が170ドル(約1万8900円、繊維産業の場合)ということを考えると、親が捻出する教育費の割合は異様に高い。そのうえ、試験前対策の特別講義にもお金を支払う必要があるという。

親の期待に応えようと「勉強第一」と口をそろえるシェムリアップの高校生たち。「恋愛するのは個人の自由だと思う。でも勉強の妨げになる。テストの点数がどんどん下がっちゃう。大学受験のための勉強があるから、恋愛している場合じゃない」と話す。

■親公認の恋愛に!

親にバレなければ恋人がいてもいいでしょ、と考える女子高生もいる。この場合、恋愛はこっそりするのが常だ。男女2人で街を歩くと、「(高校生なのに)カップルなのね」とあまり良くない印象を周りからもたれてしまう。男女3人ずつで遊びに行っても3組のカップルだと思われる。このため「男2人、女子4人と男女比をずらす」対策をとる高校生もいる。ちなみに定番のデートスポットは、シェムリアップ市郊外にある人造湖バライ、世界遺産のアンコールワットなどだ。

だが大学に入ると事情は一変する。シェムリアップの大学生の多くは、学費を自分で払うために、アルバイトではなく、フルタイムの仕事に就く。子どもは自立したと親は考え、恋愛することを許す。学業と恋愛を両立することができるようになるのだ。

カンボジアでは、「ペアルック=結婚指輪」と考えるのが当たり前。日本のように学生同士が同じアクセサリーを身につけたりはしない。恋人がいることを、アクセサリーをつけて表現するのはプロポーズや結婚式が終わってから、というのがカンボジアの恋愛流儀といえそうだ。