カンボジアのシェムリアップに、海外からのボランティアと地元のNGOおよそ20団体を結びつけるNGOがある。英国人マイケル・ホールトンさんが2008年に立ち上げ、代表を務める「ConCERT(コンサート)」だ。世界中からシェムリアップへやってきたボランティアたちの活動が、たとえ期間が短くても、カンボジアにプラスの効果を生むことを目指す。過去3年でおよそ1000人の外国人ボランティアをシェムリアップのNGOとマッチングしてきたホールトンさんは「海外からやってくるボランティアにとって重要なのは、カンボジア文化を理解し、尊重する姿勢だ」と話す。
ボランティアのマッチングを始めて10年、コンサートの評判は着実に広がっている。2015年から急激にニーズが増え、今では年間で個人80人、14~15グループ(1グループ20人)のアレンジをする。「コンサートはどんなタイプのボランティアもマッチングできる」とホールトンさんは自信をのぞかせる。
ボランティアには、期間が短いもので半日の活動がある。そのひとつが、図書館を活用した授業だ。図書館がない時代に育ったカンボジア人の教師らは、寄付された本がたくさんあっても、図書館の使い方がよくわからない。そこで外国人ボランティアが図書館の本を読み聞かせした後、本に書かれているストーリーを再現する人形劇をやったり、本に出てきた動物を工作したりしてみせる。そうすることで、カンボジア人教師らは次回から、こうした授業ができるようになる。これは大きな効果だ。
興味深いのは、外国人ボランティアが長期に活動したからといって、それがカンボジアにとってプラスになるとは限らないこと。その理由は、自分の出身国の考えややり方を強要してしまうからだ。「アメリカ人が素晴らしい英語の授業をしたら、カンボジア人の教師は自信を失くすかもしれない。そうなるとカンボジア人教師は、アメリカ人ボランティアが帰国した後、授業ができなくなってしまう。外国人ボランティアはカンボジア人のアシスタントでいてほしい」とホールトンさんは注文をつける。
異国の文化を完全に理解することは簡単ではない。カンボジア人と結婚するホールトンさんもそれを痛感する日々を送る。「とりわけ西洋人にとってカンボジアの文化を理解することは困難。私なんて、カンボジア人の妻とのコミュニケーションでさえ一苦労するときもある」
ホールトンさんは言う。「カンボジアと文化が近い日本、シンガポール、マレーシア、タイ、中国、台湾などアジア諸国からカンボジアへ、ボランティアとしてたくさん来てほしい。文化がまったく違う欧米の若者もチャレンジしている。アジア人なら、もっと寄り添いやすいはずだ」