カンボジアのイマドキ女子高生は孝行娘!? 「母のために家を建てたい」

カンボジア・シェムリアップの郊外でローさん(前列右)が家族と暮らす高床式の家の1階。近所に住む親せきが、兄夫婦の子どもの面倒をみる。日本と比べ、子育てと仕事は両立しやすい

「将来は英語の先生になりたい。お金を稼いで、高床式の実家を立派な家に建て替えるの」。こんな夢を膨らますのは、カンボジア・シュムリアップのフン・セン高校に通うチェン・ローさん(17)だ。鮮やかな赤の口紅を引くなど、見た目はイマドキの女子高生。でも実際は親思いの孝行娘だった。

ローさんの実家は、シェムリアップ市の中心部からバイクで30分走ったノコールクラオ村にある。家の造りは伝統的な高床式。風が吹くと揺れて、崩れてしまいそうだ。10畳1棟、8畳1棟ぐらいの広さの住まいに7人で住む。父は寺の修繕の仕事を、母は専業主婦をしている。

ローさんは3人きょうだいの末っ子だ。この家で生まれ育ったが、「(伝統的な高床式の家1棟とセメントの家1棟の)家に建て替えたい。そのために私は、公立の学校の英語の先生になりたいの。給料が高いし、尊敬されるから」と言う。

お金が十分にないから、お金をかけずに学ぶ方法をいつも探している、と話すローさんは高校の授業がないとき、家からバイクで30分かかるシェムリアップ中心部にある英語学校バンヤン・コミニュティ・スクール(BCS)で学ぶ。学費は無料だ。

ローさんはかつて、ノコールクラオ村にある英語学校フューチャー・クメール・チルドレン(FKC)に通っていた。そのころは英語にあまり興味がなく、成績も悪かったという。

11歳のとき、新しくできる少人数制のBCSに強い憧れを抱き、入学試験を受けた。合格すると、バイクを買うまで、自転車で月曜日から金曜日まで1時間かけて通った。「1カ月に1回タイヤを変えていた」(ローさん)。そのおかげで、今では友だちから「なんでそんなに頭がいいの?」と言われるほど英語が上達している。

ローさんの英語の勉強を応援するのは、母のパオイ・ロアンさん(53)だ。「英語の勉強を頑張って、大学へ行ってほしい。そうすれば給料の高い仕事に就ける。家を建て替えてもらえたら嬉しい」と娘に期待を寄せる。

孝行娘のローさんも「英語ができないと給料の高い仕事に就けない。良い仕事に就職できたら、給料の8割を家に入れると思う。私が幼いころ、母はいつも家にいて一緒に過ごしてくれた。私は母のために頑張りたいの」と話す。

カンボジアは日本と比べても女性の社会進出が盛んだ。上座部仏教の教えで、女子は現世(家を支えること)で功徳を積む必要があるためといわれる。「カンボジアでは、女子のほうが男子に比べて勉強熱心と考える家庭もあり、きょうだいの中で女子だけが高校や大学に進学させてもらえることもある」(ローさん)

カンボジアの大学進学率は10%程度。パオイさんは「みんな自分の子どもに変わりないわ」ときょうだい3人がお金をしっかり稼げるように全員の大学進学の道を希望した。上の2人はその思いはかなわなかったが、仕事に就いて幸せに暮らす。兄は1年前に結婚して3カ月になる息子もいる。

家族全員で今、ローさんが大学に進むことを応援する。母は「(ローさんの)結婚は26〜27歳が理想かな。結婚前の方が仕事を見つけやすいから」と言う。末っ子に懸ける家族の夢は大きい。