「フランスのラジオ局『RFI(ラジオ・フランス・インターナショナル)』が流すうその情報によって、旧フランス領のアフリカ諸国は真の独立を阻害されてきた」。こう憤るのは、フランス支配からの脱却を目指す団体「ウージョンス・パナアフリカニスト(Urgences Panafricanistes)」で活動するベナン人、オグスタ・ウメル 氏だ。同氏によると、2017年ごろからフェイスブックをはじめとするSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の浸透で、フランスに抵抗する気運が西アフリカのベナンでも高まってきた。「SNSによって若い世代に正しい情報が伝わるようになっている。反フランスを訴えるデモに参加する人も増えてきた」とウメル氏は言う。
■選挙もフランスのいいなり!?
ベナンをはじめとする旧フランス領のアフリカ諸国はかねて、フランスを優遇する政策をとってきた。その理由についてウメル氏は「RFIにある」と断言する。
「フランスにとって不都合な大統領候補が出てきた場合、RFIは『彼(彼女)は人殺しだ』といったフェイクニュースを毎日のように流す。最悪、候補者本人が殺されてしまうことも。その結果、フランスに有利な政策を打ち出す人間しか大統領になることができない」
また、選挙で勝っても、フランスの介入で政権の成立が困難になるケースも少なくない。ウメル氏によると、その代表例は2010年に実施されたコートジボアール大統領選挙だ。「あの選挙では、(CFAフランを廃止して)自国通貨の導入を目指すバクボ候補と親フランスのワタラ候補の一騎打ちだった。結果として、フランスを筆頭とする国際社会の圧力によってワタラ候補が当選者とされた。ワタラ大統領の就任でコートジボワールはフランスからの真の独立を成し得ることができなかった」と嘆く。
■CFAフランの札束を燃やす!?
フランスによる情報操作に変化が生じたのは、セネガールの首都ダカールの路上で2017年9月に起きた、西アフリカ共通の通貨CFA(セーファ)フランの札をベナン人活動家のケミ・セバ氏が燃やした事件からだ。
ケミ・セバ氏はこの一件でセネガルから国外追放されてしまう。しかし、それをきっかけとして若者を中心にフェイスブック、ツイッター、ワッツアップなどのSNSを通じて、国外追放に反対する運動が西アフリカ全体で巻き起こったのだ。ベナン最大の都市コトヌーにある広場プラス・デ・マーティに300人のデモ隊が集結した。この7割程度がSNSで活動を知った人だったという。ウメル氏は「あの運動を通して国民に真実を伝える基盤ができた」と語る。
■アフリカのためのアフリカを!
西アフリカの脱フランスに向けてウメル氏らが重要視していくのは、草の根運動だ。「これからは、ラジオしか情報源のない地方の人やSNSに触れる機会のない年配の人を巻き込んだ活動にしていきたい」とウメル氏。具体的には西アフリカの村をひとつひとつ回り、西アフリカの全国民に自国で何が起きているのか真実を伝えることを目指す。
「今は人、時間、お金、どれも足りていないが一歩一歩進んでいくしかない。今後10年をめどにこの活動を完結させたい」(ウメル氏)
ウメル氏はまた、ラッパーとしての一面ももつ。2カ月後にリリースされる新曲ではベナン南部の80%の人間が話すとされるフォン語で自国通貨がフランスに管理されている現状を訴えかける。その根底には「CFAフランではなく、西アフリカ共通の別の通貨を作ることで、『アフリカのためのアフリカ』を実現したい」という信念がある。