きっかけはドラゴンボール! 西アフリカ“ベナンの東大”を卒業した青年「絵で生計を立てたい」

ブルネル・ロドリゲスさんと彼の作品。鉛筆で描いた繊細なラインが特徴(ベナン・コトヌーで撮影)

西アフリカ・ベナンのコトヌーで会社勤めをするかたわら、独学で絵の勉強を続け、プロの画家を目指す青年がいる。ブルネル・ロドリゲスさん(彼のフェイスブックページ「イエスアイキャン」)、23歳だ。絵を描き始めたきっかけは、小学生のころにテレビで見た日本の人気アニメ「ドラゴンボール」。絵による収入は1カ月平均1万5000CFAフラン(約3000円)と少ないが、今はコンピューターグラフィック(CG)と鉛筆アートを組み合わせる技にも挑戦中。「将来は絵で生計を立て、自分のスタジオをもちたい」と夢を語る。

ロドリゲスさんは、綿花や車の輸出入を手がける親の元で育った。そんな彼は小学生の時、テレビでドラゴンボールに出会う。「初めて描いた絵は孫悟空だった」と笑う。“ベナンの東大”と呼ばれるアボメ・カラビ大学農学部に入学してからは、勉強と並行して本格的に絵を描き始める。ユーチューブやインスタグラムを使って他人の絵を参考にし、独学で技術を向上させてきた。

食べていくのがやっとという人も多いベナンでは当然、画家を取り巻く環境は甘くない。「ベナン国内で画家として十分な収入を得ている人はいない。画家志望の人は100人にも満たない」とロドリゲスさん。自分が描いた絵を売りたいと思ったら、コトヌー市内に3つある「ガレリア」と呼ばれる市場に行き、絵を買い取ってもらえるよう交渉する。相場はA4サイズで1万5000CFAフラン(約3000円)、大きいサイズだと5万CFAフラン(約10000円)ほどだ。「売れるのは月に1枚程度。今月はまだ売れてない」とロドリゲスさんは嘆く。

だがベナンの絵画業界は最近、少しずつだが盛り上がりを見せ始めた。その際たる例が年に1度、コトヌーで3日にわたって開かれる画家のためのイベント「ブートゥーン」だ。初心者から画家志望の人まで50人以上が集まる。交流を通して技術を上達させるというのが目的だ。ロドリゲスさんも過去に3度参加し、今は運営に携わる。

ロドリゲスさんは現在、ベナンで誰も挑戦したことのないCGを使った鉛筆アートに取り組む。また将来は、絵で生計を立てるだけではなく、個人スタジオを所有し、若者に絵を教えたいと語る。「ベナンの絵画文化の発展の一助となりたい」と話すロドリゲスさんの挑戦は続く。

ブルネル・ロドリゲスさんのスケッチブック。時間を見つけて描き続ける。大きな絵だと完成まで1週間かかるという(ベナン・コトヌーで撮影)

ブルネル・ロドリゲスさんのスケッチブック。時間を見つけて描き続ける。大きな絵だと完成まで1週間かかるという(ベナン・コトヌーで撮影)