ミャンマーで人気の日本語学習、高額な授業料と教材不足の切り札は「語学カフェ」!

「ヤンゴンランゲージカフェ」の店内。右はオーナーのニンイーラインさん。さまざまな言葉が壁を飾る

雨季が終わり、乾いた日差しが照り付ける10月中旬のヤンゴン。人と建物が密集した街を歩いていると、ときおり日本語や桜、紅葉が描かれた看板が目につく。その多くが日本語学校の看板だ。他の東南アジア諸国と同じように、ミャンマーでも日本語学習熱は高い。ところが教材の不足や授業料の高さから、日本語を気軽に学べないのが実情。そんな中、誰もが外国語を学習できる場として「ヤンゴンランゲージカフェ」が誕生した。

「ミャンマー人が日本語を勉強する理由は、給料の高い日系企業で働きたいから」。こう語るのは、マンダレー外国語大学日本語科4年の男子学生(23)だ。彼は、ミャンマー国内の日系大手企業への就職を希望している。日本での就職となると生活費が高くなってしまうため、日本語科では現地の日系企業への就職希望者が多い。2011年の民政移管以降、ラストフロンティアと呼ばれたミャンマーに日本企業が次々と拠点を構え、日本語を用いる仕事が増えている。マンダレー外国語大学では現在、日本語科は英語科に次いで人気が高いという。

だがミャンマーでは誰もが日本語を勉強できる訳ではない。ヤンゴンの日本語学校で教師をしていた日本の女子大生(23)は「経済的に恵まれている人しかいなかった」と話す。工場労働者の1週間の稼ぎに相当する3万チャット(約2100円)の月謝を、一般的なミャンマー人が払うのは困難だ。また教材も足りない。書店に並ぶ教材は使いづらいうえに、間違いもざら。日本語を身につけたい人は高い授業料を払って、日本語学校に行く必要があると考えるミャンマーの学生は多い。日本語学校でさえ、教材が不足しているため、教科書をコピーしたものを生徒に売る現状がある。

語学を学ぶ場所が限られているミャンマーで、外国語学習をテーマとしたカフェが、ヤンゴンランゲージカフェだ。このカフェではコーヒーや軽食を楽しみながら、教材やゲームを利用して外国語を学ぶ。店内には日本語をはじめ、英語や中国語、韓国語の教材がずらり。外国映画の上映会や音楽イベントを通して、利用客同士で交流もできる。

オーナーのニンイーラインさんは、かつて日本語を勉強していたときに教材の足りなさを感じていた。ミャンマーには日本語学校はたくさんあるが、独学で外国語を学べる環境は整っていない。一方、自身が英国に留学した際は、図書館に多くの外国語教材が並んでいることに感銘を受けた。その苦労を思い出し、ミャンマーにも自習者のための外国語学習の場を作ろうと、2018年3月にヤンゴンランゲージカフェを立ち上げた。

今後は外国語学習者同士でグループを作って、お互いに教えあうイベントを開く予定だ。ニンイーラインさんは「意欲のある人に自主学習の場を提供したい」と目を輝かせる。ヤンゴンの街角のカフェが、新たな外国語学習の形を提示している。