バンダアチェ郊外のランプウ海岸で写真を撮りあうアチェの女性たち。 ここでも流行りはインスタ映え?
イスラム教徒はなぜ、未婚の女性に処女であることを求めるのか――。「処女であることは、その人のモラルの高さを見極める判断基準になるからだ」。これは、インドネシア・スマトラ島北端の街バンダアチェで観光ガイドをする男性ワワンさん(仮名、45歳)の言葉だ。
2本指テストは150円
断っておくが、バンダアチェを州都とするアチェ州はインドネシアで唯一、シャリーア(イスラム法)が適用される厳格なイスラム教の地域。「酒などもってのほか」というほどワワンさんは敬虔なイスラム教徒だ。
イスラム教の聖典コーランは婚前交渉を厳しく禁じている。ワワンさんによると、その戒律を守り、結婚まで処女を貫くということは、その人の誠実性、真面目さ、信仰心の厚さを示しているという。
アチェ州の病院では驚くことに、処女検査がいまだに行われている。妻となる女性のモラルを確かめるため、結婚前にこの検査を受けるのは慣習だ。2本の指で処女膜を確認することから「2本指テスト」とも呼ばれるこの検査の費用は1回2万~3万ルピア(150~220円)。庶民の食堂の1食分とほぼ同じ値段。その日のうちに結果が出、医者ははっきり、処女かそうでないかを告知するという。結果は親族にも知らされるため、処女であるべきという規範意識・社会的圧力は強い。
言うまでもなく、検査結果の科学的信ぴょう性は疑わしい。だがこの結果が「陽性」だった場合、たとえ結婚直前であったとしても、「婚約破棄にまでつながりかねない」(ワワンさん)という。もし女性が検査を拒めばどうなるか。「それは、処女でないと自分から言っているようなもの」とワワンさんは語る。
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