インドネシアの敬虔なイスラム男性が語る、女性に「処女」を求める“意外とオトナ”な理由

バンダアチェ郊外のランプウ海岸で写真を撮りあうアチェの女性たち。 ここでも流行りはインスタ映え?

童貞検査もやるべき?

処女検査はアチェ州以外でも、インドネシアの国軍や警察の採用試験で実施されている、と数年前に報じられたことがある。女性の肉体的・精神的苦痛が大きく、人権侵害にあたるとして、国際社会から大きな批判を浴びた。だがその際にインドネシア政府はこんな反論をした。

「モラルに問題のある人間を振るい落とし、国の安全を担うにふさわしい人材を採るためにやっている。他にモラルの高さを確かめる方法はない」

インドネシア政府が問題としたのはあくまでモラル。「処女=モラルが高い」という図式が前提にあるのだ。

一夫多妻制を認めるなど、どうしても男性優位な印象がつきまとうイスラム教。本心では女性に対する独占欲もあるのではないか、との疑問もわく。だが少なくとも、過去の男性経験の有無そのものを問うているのではないのは確かなようだ。「離婚した女性が必ずしも再婚しづらくなるわけではない。離婚の原因は、家族関係や経済的な事情など人それぞれ。離婚したからといって本人のモラルに問題があるとまではいえないから」(ワワンさん)

日本にも「処女厨」と呼ばれる、処女を過度に崇める人たちが一定数いる。彼らの多くは過去の男と比べられるのを嫌う。「中古品であるバツイチとは結婚できない」と言う過激派までいる。それに比べれば、アチェ州の男性の考え方のほうが成熟しているのかもしれない。

ちなみにコーランで婚前交渉が禁じられているのは男性も同じ。アチェ州では婚前交渉が発覚すればシャリーアに基づき鞭打ちの刑に処される。「童貞検査」が行われていないだけで(これ自体は不平等だが)、モラル重視という実質は変わらないとの見方もできる。

イスラムと一口にいっても、インドネシアに多様な価値観があるのも事実だ。処女検査については国内の女性人権活動家からも非難の声が上がっているし、スマトラ島北部のメダンに住む男子大学生(21歳)のように「処女性は重要ではない。女性にだけ処女検査をするのは不公平だ」との意見もある。

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