孤児院なのに進学校!? 西アフリカ・ベナンで一番大きい孤児院が「教育」にお金をかけるワケ

ベナンで一番大きい孤児院「クラウディオ・ミグネコ孤児院」。立派な校舎。オーナーはカトリックの神父だ(ベナン・アボメカラビ市)

西アフリカ・ベナンのアボメカラビ市に、およそ240人の0~12歳の子どもが住む、学校を併設した孤児院がある。ウリは教育レベルの高さだ。この孤児院が運営する小学校の児童は、高校へ進級する際に受ける「初等教育卒業試験(CEP)」で、2年連続の合格率100%を記録した。

この孤児院の名前はクラウディオ・ミグネコ孤児院。2005年にオープンし、現在は敷地内に小学校と高校(中学を含む)を併設する。以前は小学校しかなかったが、2017年に高校を新設。200人の児童と37人の生徒が学ぶ。

ベナンでは小学校から高校(ベナンに中学校はない)へ進学する際、政府が実施する統一テストCEPを受け、合格する必要がある。クラウディオ・ミグネコ孤児院の小学校からは2017年と2018年の2年間で計37人の児童がCEPを受験。全員が合格した。この結果は、ベナン全体の合格率64%(2018年)を大きく上回る。

2017年のテストでは2人の児童がCEPで高得点を記録。ベナンの優秀な若者が集まる国立高校「一般教育学校(College Enseignement General)」に入学した。学費は年間1万5400CFAフラン(約3000円)かかるが、孤児院のオーナーが負担しているという。

クラウディオ・ミグネコ孤児院の小学校が抜群の進学実績を誇るのには理由がある。それは、優秀な教師を雇い、フランスの教科書を取り寄せ、授業で使っているからだ。

ベナンの一般的な孤児院では、孤児院のスタッフが小学校の教師を兼任することが多い。だがクラウディオ・ミグネコ孤児院は、授業の質を上げるため、スタッフとは別に教師を6人雇う。なかには“ベナンの東大”といわれるアボメカラビ大学の出身者もいる。小学校なのに、教師は自分の専門の教科しか教えないという。孤児院部門の責任者ウンディバソ・オデットさんは「専門の教師が教えることで児童の成績が上がる」と胸を張る。

教育環境を充実させれば、そのぶんコストがかかる。オデットさんによれば、教師の月給は4万CFAフラン(約8000円)だ。「でも孤児たちには頼る人がいないという実情がある。彼らは将来、自分の力だけで生きていかなければならない。そのためには教育が不可欠。お金をかける価値はある」(オデットさん)

オデットさんの夢は、クラウディオ・ミグネコ孤児院の子どもたちの中からいつの日か、ベナンの大統領が出ること。彼らが大人になったとき、孤児を守ってくれる社会を作ってほしいと切望する。

クラウディオ・ミグネコ孤児院の孤児院部門の責任者を務めるオデッティーさん

クラウディオ・ミグネコ孤児院の孤児院部門の責任者を務めるオデッティーさん