ITで政府の腐敗を洗い出す! アフリカで新たな撲滅運動が盛んに

アフリカでもITは急速に普及している(写真はベナン・コトヌー)。ITを効果的に使うことで汚職をなくすことができるかもしれない

「IT(情報技術)が汚職撲滅の武器になる!」。デンマーク・コペンハーゲンで10月下旬に開かれた第18回世界腐敗防止会議で、国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁がこんな声明を発表した。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが毎年出す汚職認識指数で最もひどいとされたサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカでは今、インターネットやソーシャルメディアといったITを使った汚職撲滅運動が広がっている。

汚職撲滅運動の先頭に立つのが、ナイジェリアのNGOバジットだ。バジットは国家予算や財政のデータを集め、誰が見てもわかるようにグラフにまとめる。政府の財政状況を市民は理解しやすくなり、疑問があった場合、声を上げる。市民の政治参加を促し、政府の説明責任を大きくするのが狙いだ。

バジットのグラフをきっかけに、ナイジェリア・ケビ州ジェダ地域に1万1000ドル(1250万円)をかけて建設予定だったユースセンターが架空の事業だったことがわかった。

ソーシャルメディアを駆使した抗議も盛んだ。英国在住のナイジェリア人医師ハービー・オルフンミラーヨさんは、ツイッターで「アフリカのほとんどの商業銀行ではATMの利用手数料がかかる。だが他の地域ではない」とハッシュタグ「#EndBankingFraut」をつけてつぶやいた。これは多くのフォローワーにリツイートされ、ナイジェリア議会が銀行に対して手数料請求の一時停止を命令するに至った。

ITを使って汚職をあぶり出し、政府に説明責任を求める運動はナイジェリアだけでなく、ガンビアやケニアでも活発だ。

国際通貨基金(IMF)の発表によると、世界で2兆ドル(225兆円)が毎年、汚職によって誰かのポケットに入るという。汚職の規模は政府開発援助(ODA)の10倍に相当する、と米調査機関グローバル・ファイナンシャル・インテグリティーは推測する。

シュタイナーUNDP総裁は「市民は、汚職により政府や公的機関を信頼しなくなる。この結果として、地域や国家間での平和や安全が脅かされる」と指摘する。トランスペアレンシー・インターナショナルが発表した2017年の汚職認識指数をみると実際、ワースト5カ国(ソマリア、南スーダン、シリア、アフガニスタン、イエメン)は世界平和指数のワースト6カ国にも名を連ねる。