故人を弔う葬式で泣き叫び、床を転げまわる若者たち。故人の親類・友人ではなく葬式を盛り上げるために雇われたサクラの集団だ。葬式を盛り上げることで200~5000ケニアシリング(200~5000円)稼ぐ。この「葬式盛り上げ団」が生まれた背景には、家族のために稼ぎたい若者と親族の地方離れに悩む村人との持ちつ持たれつの関係にある。
金曜日の深夜、ケニア西部シアヤ郡の村。マイケル・オニャンゴさんの葬式にその集団はいた。ダンスミュージックやゴスペルが大音量で延々と鳴り響き、人々が歌い踊るというルオ族伝統の葬式スタイル。葬式は夜中の2時過ぎまで続き、クライマックスへ。故人が友人たちによって埋葬される瞬間、棺につかまり一緒に埋葬されようとする若者、泣き叫んで床を転げ回る若者の姿が。参列者の間でホッとした笑いが広がる。スマートフォンを取りだし、その様子を撮影する人も。
埋葬される悲しみを棺につかまることで表現したダンカン・オチエンさん(20)は「故人の親せきに頼まれた。大役だから5000ケニアシリング(約5000円)もらう予定。費用は父親の通院費用に充てたい」と話す。オチエンさんの友人(21)は「きょうだいの進学費用に使う。余れば自分の靴を買いたい」と満面の笑顔。2人とも現在求職中で、知人の紹介を受けて、1カ月に2回くらい、見ず知らずの土地の葬式に行くという。
この葬式では他に3人の若者がいた。役柄によってギャラが違うようで、泣きながら故人の名前を大声で叫んだ人は1000ケニアシリング(約1000円)、泣き叫びながら地面を転げ回った人は3000ケニアシリング(約3000円)を得たという。
故人と友人だった参列者のジェーン・アコスさんは、ルオ族にとって葬式は故人への尊敬や愛情を表現する最期の場と語る。「盛大な葬式のために家族や親族は2週間にわたって葬式の準備をする。最近では出稼ぎや進学で村を離れる人も多く、葬式に来られないことも増えた。きょうの葬式は最高に盛り上がった。撮影した動画を家族や友人に見せたい」