タンザニアのザンジバルに30年以上在住する島岡強氏(55)と妻の由美子氏はこのほど、大阪市内の阪急梅田本店で開かれたタンザニアの絵画「ティンガティンガ」展のトークイベントに登壇した。自身の職業を革命家と明言する島岡氏は、ティンガティンガやアフリカ雑貨、インスタントコーヒーを輸出するかたわら、漁業会社を経営し、現地の漁師を雇用する。「アフリカ各国を、先進国から経済的、精神的に自立させるために、“アフリカ独立革命”を実現する」と島岡氏は力説する。
島岡氏の言うアフリカ独立革命とは、武力で政府を転覆させ、新たな国家を作るというものではない。アフリカの国々が自ら産業を興し、援助に頼らなくなくとも生活できるようにすること。先進国と対等な関係になることを意味する。
「タンザニアで採れた綿花は安価で輸出され、服などに加工された後、高値でタンザニアに返ってくる。タンザニア国内で商品を作ることができれば、経済的に自立できる」と島岡由美子氏は著書「続・我が志アフリカにあり」で述べている。
アフリカ独立革命を実現するために島岡氏が手がける事業のひとつが、ティンガティンガの販売だ。ティンガティンガとは、エドワード・サイディ・ティンガティンガが故郷を思い、動物を描いたことから始まったタンザニア独自の絵画。6色のペンキを使って、アフリカの自然や人々の生活を描写する。
島岡氏は、昔から親交のあったティンガティンガアーティストに日本での販売ルートの開拓を依頼され、日本でティンガティンガ展を開催するようになった。2008年に立ち上げた展示会はこれまで横浜、名古屋、大阪、札幌、仙台、福岡で開いてきた。タンザニア人のアーティストも来日し、ライブペイントも行う。
島岡氏は「ティンガティンガ展を定期的に日本で開催することは、アーティストたちにとって大きな自信となり、アートを向上させることにもつながっている。また展示会による収入が、彼らの生活向上にも役立ち、やる気に結びつく」と語る。
アフリカ独立革命のもうひとつの事業が漁業だ。漁師たちが仕事にありつけるよう今までに7隻の漁船を製造した。カクメイジ号と名付けた漁船を所有する島岡氏は、今ではザンジバル港で最も古株の船主だ。現在200人の漁師がカクメイジ号で働く。
「カクメイジ号で働く漁師を固定して雇うことにより、自分たちの船という意識が芽生えた。他の船が故障すると、みんなで助け合うようになった。ティンガティンガのアーティストも、自分の作品に自信をもっている。アフリカ独立革命とは経済革命、そして意識革命だ。命が続く限り、志に従って革命を進めていく」と島岡氏は力強く話す。