途上国で栄養不良かどうかを調べるのは大変だった! 測定者も赤ちゃんもお母さんも‥‥

北ウガンダで乳児を身体測定しているところ。測定者の半数は初心者。このため1週間の訓練も実施した

生後6~23カ月の乳児が栄養不良かどうかを判定するため、正確に身体測定するのは想像以上に難しい。手足をばたつかせるからだ。NPO法人栄養不良対策行動ネットワーク(NAM)が都内で開催したワークショップで講師を務めた渡辺鋼市郎代表は「北ウガンダで栄養調査をした際は、事前に、その村出身の測定者に1日中、乳児を練習台に訓練してもらった」と述べた。

栄養状態の判定に必要なのは、身長、体重、二の腕中央部外周(MUAC)の3カ所のデータ。農村部で身長や体重を測るうえでとくに難しいのは、測定計を平らな場所に置けないことや、押さえていないと乳児が動くことだ。

MUACの測定も簡単ではない。通常は乳児のひじを軽く曲げた状態で、「命のうでわ」と呼ばれる紙テープを腕に回して測る。だが位置は上腕の中央でないといけない。また巻き方はキツすぎても、緩すぎてもダメだ。MUAC を測定することで5歳未満児が急性栄養失調なのかどうかを即座に判別できるが、「腕の曲げ具合や測る位置、紙テープの締め具合によって結果が変わってしまう」(渡辺代表)という。

ワークショップでは、参加者は5つのグループに分かれ、2歳児を模した人形で測定した。誤差は、身長で最大2.7センチメートル、体重は同350グラム、MUACは同11.2ミリメートルもあった。参加者のひとりは「人形を測っただけなのに、こんなに差が出てびっくりした。難しさが身をもってわかった」と話した。

誤差を縮めるためには訓練が必須だ。渡辺代表が北ウガンダで栄養調査をした時は10人の測定者が10人の乳児を相手に1日中練習した。1人の乳児が練習台となった回数は20回だ。「訓練に協力する赤ちゃんも大変。最後には泣き出す赤ちゃんもいる。人道的に問題がある」と渡辺代表は問題視する。

訓練に協力してもらう乳児は誰でもいいわけではない。調査対象地区に入っておらず、また近くに住んでいることが条件。近くの住人だと移動に時間もお金もかからず、訓練にしっかり時間をかけられるからだ。

訓練に協力したことへの謝礼はせっけんなど生活必需品のみ。「金銭や豪華な贈答品でお礼することは望ましくない」と渡辺代表は考える。なぜなら金銭目的になってしまうことや、やっかみなど地域内でトラブルが起きるのを防ぐためだ。

栄養調査で得られた結果は各国の保健省や国際NGO、地元NGOなどに共有され、さまざまな事業のベースとなる。栄養改善や疾病対策などの3~5年のプロジェクトでは通常、始まる前と終わった後に調査し、それを比べ、効果を測定する。